玖珂郡医師会
災害時救急医療応援態勢


はじめに


阪神大震災を経験しその教訓より各地で地域防災体制の検討や見直しが行われるようになっています。先日の玖珂、岩国、大竹の合同理事会でも岩国市医師会より議題として提案がありました。 振り返って玖珂郡医師会をみますと、地域の災害時救急体制、防災体制については十分に検討もしておらず、また体制づくりや行政との相談もありません。これもまた6ヶ町村という各行政に対応が出来ない医師会の宿命と思います。しかし、以前から会員の中にも救急医療の応援態勢の整備が提案されたこともあり今後出来る範囲で体制づくりを行う必要はあると思います。 地域防災体制については各町村で計画はされると思いますが、これこそ広域の体制づくりが必要で少なくとも玖西地区、玖北地区の行政の合同検討会がなくては実現も運用も出来ないものと思いますし、また、行政が整備、訓練などに資金を出してくれるかどうかが問題です。今回はじめての検討委員会を開催します。

   玖珂郡医師会
  「第1回災害時救急医療応援体制委員会」検討事項



1.「災害時救急医療応援体制委員会」の構成メンバー
  メンバー構成として、玖珂郡医師会救急医療担当理事を委員長、広報 担当理事を副委員長とし、委員は玖西地区は各町2名で計4名、玖北地 区3名程度を理事会で選任する。会長、副会長は顧問として委員会の 委員となる。任期は玖珂郡医師会役員の任期と同じとする。

第1回「災害時救急医療応援体制委員会」出席者
   委員長 ;救急医療担当理事 吉岡春紀
   副委員長;広報担当理事   河郷 忍
   委 員 ;玖西地区 玖珂町 川田礼治、岡本 勝
             周東町 藤政篤志、松井達也
        玖北地区 美和町 茶川治樹
             錦 町 上利 進、松原 宏
   顧 問 ;玖珂郡医師会会長 藤中節夫
             副会長 福田瑞穂
             理事  藤政志朗
2.玖珂郡医師会内で出来る災害規模の想定
 玖珂郡医師会が想定している災害規模は郡内の多くの医療機関の壊 滅的な破壊や医療従事者の多数の死傷者等が出る様な広域の大災害は 想定出来ず、医師会として地元玖珂郡内で発生した災害や事故で、単独の医療機関での対応が困難な状況の場合や救急隊、警察の要請で、他の医師が応援に駆けつける救急医療体制づくりを基本とする。
 行政の計画する地域防災体制との連携は別に検討する。
 従って今回は初めての会合であり玖珂郡医師会内での組織作りが主体であり、具体的な事例の検討や、玖珂郡医師会以外の機関との対応 については十分に検討できなかったため、今後も委員会を開催し、検討を行いたい。
 以上を基本として「災害時救急医療応援体制」の検討結果を報告する。

玖珂郡医師会     「災害時救急医療応援体制」案

玖珂郡医師会内での緊急災害時の救急医療に対する各医療機関の応援体制を定める。
1.救急医療応接体制を発動する条件
 1)玖珂郡医師会会員の医療機関より要請のあった場合
 2)関係消防署、警察署より要請のあった場合を原則とする。  その他
 3)近隣医師会より要請のあった場合
 4)関係官庁(県・関係町村その他)より要請のあった場合
 5)その他(例えば、大量交通災害等における関係会社等)よりの要請等の場合
 3-5)については県医師会の広域救急医療体制や関係町村などとの地域防災体制に関連することであり今後の検討課題である。
2.救急医療応援体制の編成について
 1)玖珂郡医師会「災害時救急医療応援隊(仮称)」隊長は医師会長、副隊長は副会長がその任につき、救急担当理事がこれを補佐する
 2)玖珂郡医師会の地域性に考慮し、玖珂郡を以下の地区に分け、地区隊をもうける。
 (1)玖西地区隊=玖珂町、周東町
 (2)玖北地区隊=本郷村、錦町、美川町、美和町
  また、各地区隊毎に地域基幹病院を選定し依頼する。
    地域基幹病院としては、玖西地区 藤政病院、
               玖北地区 錦中央病院とする。
  由宇町、熊毛町については岩国、柳井、熊毛郡市医師会との広域の医療体制で今後の検討課題である。  なお、各地区隊のみでの対応困難な場合には、他地区隊よりも応援するものとする。
 災害の地域性を考え基幹病院は臨機応変に対応する。
 (3)前記各地区隊には、各々救急班員を選任する。
  救急班員;玖西地区 玖珂町 木村敏明、川田礼治
            周東町 藤政篤志、松井達也
       玖北地区 美和町 茶川治樹
            錦 町 上利 進、松原 宏
   班員の内 玖西地区 藤政篤志
        玖北地区 上利 進 を班長とする。 敬称略
3.救急医療応援体制発動に関して
 1)前記1.の要件を充たした場合、救急医療応援隊(仮称)隊長名にて発動する。
  なお、医師会長不在の場合には副会長、または救急担当理事により、発動することもある。
4.救急医療応援体制連絡網
   緊急連絡網は玖珂郡医師会の連絡網とは別に災害時連絡網を設定する。電話網が使えないような災害時の連絡網は玖珂郡医師会単独の対応は不可能であり行政の防災計画との関連で対応する。
  それまでは各自の携帯電話で対応する。
災害時連絡網 ( 別紙 災害時救急応援体制組織図 参照 )
 1) 災害発生現場で救急隊や警察により連絡を受け、搬送や現場での 治療を依頼され、単独での医療が困難と判断した場合、その医療 機関は救急医療応援隊(仮称)隊長である医師会長に応援を要請する。
 2) 会長はこの連絡を受けた場合には、至急、副会長、救急担当理事と対応を相談し、同理事は地区の救急班員に連絡し地域救急基幹病院に救急班員の派遣を要請する。
 3) 救急班員は隊長又は基幹病院の班長の指示で基幹病院、若しくは災害現場に赴く事とする。
 4)一般の医師会会員に対する連絡も、災害時救急応援体制連絡網で電話およびFAXあるいはその他適当な方法をもって行う。
 5)救急医療応援体制が発動された場合、当該医師会会員はこれに協力するものとする。
  出務した救急班員や医師会員は、隊長の指示のもとで救急患者に対し必要な医療や搬送のトリアージを行う。なお、必要に応じ、検死(検屍)業務も行うものとする。
6)地域基幹病院での医療の指示は同院の院長が指揮をとることとするが、対外的な対策や連絡、マスコミへの応対は救急担当理事、広報担当理事がそれに当たる事とする。
5.救急医療体制発動に際し、出務する時には必要と思われる医薬品、医療機器等は行政など関係機関との交渉が出来るまでは可能なかぎり 各自で持参する。これらの必要経費は玖珂郡医師会にて補填し、玖珂郡医師会は一括して要請機関に請求するものとする。
 なお、救急セットや災害時の応援体制に必要な備品等については、今後関係町村と折衝を行う必要がある。
6.医師以外の医療従事者の応援体制
 医師以外のコ・メディカルの応援体制も必要であるが、これも救急 基幹病院のコ・メディカルで対応するのか、応援医師は自分の医療機 関のコ・メディカルを同伴するのか、検討課題である。  現実としては救急基幹病院では緊急時の自己機関の職員の応援態勢 があると思われるが、班員の医療機関では1-2名の緊急時応援看護婦 も設定し医師と同伴して応援に駆けつけることがあることの了解を得ておくことが望ましい。各医療機関で緊急時派遣できる医師数やコ・メディカルの数の調査も今後の検討課題である。
7.医師会会員が公的な要請で現場に出務するに際しては、原則として公用車(救急車,警察車両を含む)をもって出務するものとする。
民間医療機関からの要請の場合には各自の自家用車の場合もあり得る。
8.救急医療応援体制出務に際し、会員に負傷、死亡等の事故が発生した場合については、公的機関よりの要請にたいしては、公務災害を、民間機関の場合には労災に準じた処遇を玖珂郡医師会より申し入れるものとする。なお、医師会会員と共に救急医療応援体制に基き、その業務に従事した医師会会員所属のコ・メディカルもこれに準じるものとする。
9.災害時救急医療に際しては、関係町村、消防署(救急隊)、警察 署並びに歯科医師会、薬剤師会等との連携はきわめて重要と思われるので、今後各関係機関との協議、連絡および訓練の機会を持つ事が必要である。なお、これらに対する必要経費は公的機関(関連町村)で負担する様検討する。
 特に各地域における消防署、救急隊との連携は重要であり、各地区毎に救急連絡協議会を開催することが望ましい。
10. 6ヶ町村救急医療対策協議会との関係について
 6ヶ町村の行政との個別の対応は難しい面があるが、行政側も地域 防災体制の見直しを迫られている。今回の応援体制の整備と行政の考えている防災体制とは自ずから災害規模も異なり、町村レベルでの医師の協力は各町村での出来る範囲の協力とする。
 すでにある6ヶ町村救急医療対策協議会や岩国地域救急医療対策協議会を活用し、今まで行ってこなかった災害時救急医療体制の検討を行う事と、また近隣医師会、特に岩国医師会や国立岩国病院とも連携を保ち合同理事会などでの共通の検討の課題とする。

以上第1回 玖珂郡医師会 災害時救急医療応援体制検討委員会で検討し、確認できたもの、今後の検討を要するもの、問題点等を記載したが、地域全体に及ぶような大災害では単独の医師会では対応は出来ず、山口県、県医師会、市町村などの広域の応援体制づくりが必要であろう。
               平成7年9月14日 
        玖珂郡医師会 地域医療救急医療担当理事 吉岡春紀 
 


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