医療事故対策マニュアル(モデル)

一医療事故発生時になすべきこと一

 あってはならないことであるが、万一院内で医療事故が発生した場合あわてずに次の通り処置すること。

1.同僚医師、看護婦の応援を仰ぎ救急処置に全力を尽くすこと
 医療事故発生時には、当事者は気が動転していることが多いので必ず周囲の医師、医療関係者の応援を仰ぎ、救急処置に万全を尽し、悪結果回避義務を履行することが大切。応援医師などは比較的、冷静に患者及び患者家族に対処してくれることが多いものである。

2.上司に報告し、指示を仰ぐこと
 頭の混乱している当事者だけで処理しようとしないで、上司あるいは上司経由で経験深い専門家の意見を聞き対処すること
 上司に連絡がつかない場合には、副院長(どうしても連絡がつかない場合には院長)の指示を得ること。

3.突然原因不明で死亡したような場合は、副院長(不在時には院長)の許可を得たうえ警察に届けること
 警察に届け出て、後の処理を警察にゆだねたほうが、妥当な場合もある。状況によっては、病理解剖をすすめることが大切で、剖検によって思いがけない所見が得られることもある。

4.カルテなどに診療経過を正確に記載しておく
 緊急事態発生時には救急処置を優先するために、カルテや看護記録などの記事に誤りのある可能性が高い。後日それらを訂正することがあるが、どこをどのように訂正したか第三者が判別できるように訂正すべきである。
 重要な部分の文字が消されたり、紙が貼られたり、切り取られたりしていると、証拠隠滅の疑いをかけられることになる。

5.家族、遺族との対応について
 突然の緊急事態に興奮している家族、遺族に対する病状の説明には、同僚医師、看護婦などの複数の立会いのもとに、誠意ある態度でのぞむことが大切である。

6.警察官、検察官の事情聴取に対して
 業務上過失致死傷害の疑いで司法解剖になったり、被疑者として取り調べける場合もある。カルテや看護記録などに基づき客観的・医学的観点からも首尾一貫した説明を行うことが大切。注射器や残存する薬液などの重要な証拠フ逸しないように注意しなければならない。

7.前医の批判をしないこと
 引き受けた以上引き受けた者の責任であり、事後処理をきちんと行うこと。どれほど重症であっても、引き受けて治療するのが後医の務めである。

8.専門医、指導医の資格は取得しておいた方が良い

9.緊急事態発生時、専門医がいない施設は、他の専門医の応援を頼むこと
 患者を動かすことが、患者の状態を悪くすると考えられる場合もあるので、日頃から、病診・病病連携がスムーズに運べる関係の構築が必要。

10.科学的根拠にもとづく医療
 現代医療訴訟の判決基準は西洋医学反びその学説に準拠したものであるの今後の紛争事例として、漢方や東洋医学にも及ぶことが予想され、十分な注が必要である。特に、説明を十分にすること。

11.医療訴訟について
 多くは医師個人が訴えられる事は少ない。ただし患者との関係が平素からうまくいっていない場合は医師個人も訴えられる。また訴訟に勝訴しても、病院その設立機関から該当医師の規則違反で起こった事例では、賠償金の返還をめられることがある。

12.インフォームド コンセントについて
 最善の紛争防止策は「患者や家族とのコミュニケーションと治療についての十分なインフォームド コンセント」につきる。その際、医療者サイドも患者サドも複数の立会いの下で行うこと、話した内容は必ずカルテに記入のこと、検査や当該医療の必要性、成功率など、予後も含め説明のこと、成功率においては、世界での、あるいは日本での成功率を、できれば当院での成績も合わせ説明のこと。


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