会長インタビュー 郡市医師会と県医との連携をさぐる
 第7回 玖珂郡医師会会長 福田瑞穂先生

とき 7月12日 ところ 県医師会館
聞き手 吉岡達生編集委員

      県医師会報 13年9月21日 1621号掲載


吉岡 会議の後のお疲れのところありがとうございます。
   まず玖珂郡医師会の構成からお話していただきたいと思います。

玖珂郡医師会の構成概要

福田 玖珂郡は非常に複雑なんですね。玖北に4町村、玖西に2町あります。はとんどのドクターはこの6町の方なんですが、由宇町から病院が2つ入っておりまして、能毛町から3名、1号会員で入っておられます。また2号会員で下松医師会と玖珂郡医師会に両方入っておられる方も3名おられます。
 行政区域も変なふうに分かれておりまして、他にもこういうところがあると思うんですけど、いつも6町村を相手にしないといけないので、いろんなことを決めるときにややこしいんです。そういう地理的な問題があります。
 会員数は、県医師会の1号会員が30名、2号会員は19名、3号会員2名、平均年齢は63歳です。医療機関は29施設です。

吉岡 週1回「玖医速報」を出されているとのことですが、これはファックスですか。
福田 できたら私がまずチェックしてファックスで送り、翌日には各医療機関に届くようにしています。以前に出た速報はいつでもインターネットで見ることができます。
吉岡 医師会報は年2回発行ですね。
福田 2年くらい前から2回にしました。それまでは年に4回出していたんですが、玖医速報でほとんど足りますので。
 伝達事項の多いときには速報の速報があります。医師会の事務局は玖珂中央病院に置いて、そこに午後だけ事務員を一人だけ置いています。彼女ががんばってくれているわけです。

吉岡 大変ですね。
福田 慣れるまでは大変です。今でも入ってくる膨大な情報の処理には困っています。
吉岡 会報の原稿は集まりますか。
福田 集まりにくいですけど、総会が年2回ありますから、それを載せます。勉強会のことも載せます。

吉岡 休日の診療体制はいかがですか。
福田 玖北と玖西の2か所で在宅休日当番医をやっていますが、非常に効率が悪いんです。
吉岡 距離があるんですか。
福田 ありますね。例えば錦町と周東町でやはり1時間かかりますから。
吉岡 こういう体制を作るときには行政とも折衝しないといけませんね。
福田 そうなんです。それがなかなかやっかいなんですよ。1か所でやれば名目は立つんだから1か所でやろうという話も実は出るんですが、患者さんの便利さを考えるとー…・。
 もっとも、例えば本郷村で休日当番をやっても、美川町の人ははとんど行きませんよね。錦町でやっている時は美和町の人はほとんどが岩国に行きますから。私は小児科をやっているから結構来る方ですが、かぜ等が流行らないときには一人か二人ということもあります。

吉岡 私は耳鼻科なんですが在宅をしていても、ひどいときは二人か三人で、多いときには十何人来てばたばたしてしまうし。全然来られないのも困るんですよね。
福田 せっかく一日待って、一人電話だけだったということもありましたし。
吉岡 冷房も入れていますしね。岩国だと産婦人科、耳鼻科、眼科でも在宅当番をしています。実際、産婦人科の先生が言われるのは、どうせ自分はいつも在宅当番みたいなものだからと言われるんです。患者さんが来るかと言えば、急患で来られる方はそうおられないんですね。冷房暖房をかけて事務員さんが1人出てきても、来られないけど止めるわけにはいかないですし。
福田 在宅休日当番の補助金は、昔出始めた頃は使い方に制限があり苦労していました。診療所に直接渡してはいけないことになっていました。今はむしろ協力病院に直接渡せといっています。

医師会活動

吉岡 次に病診連携、診診連携について伺います。玖北に町立病院が2つ、玖西に個人病院が5つ、あとは車を飛ばせば岩国市内の病院ということですね。
福田 とてもうまくいっていると思います。ほとんどの先生方は、岩国市医師会病院や国立岩国病院に連絡し、2次・3次救急まではなんとかもってもらっています。

吉岡 勉強会、講演会についてはどうですか。
福田 玖珂郡では月に1回しています。症例検討は年3回くらいです。それから、ほとんどの先生が岩国のいろいろな勉強会に入っておられます。それに国立岩国病院の研修会、最近は少ないですが、昔は玖珂郡の先生がすごく熱心でよく出ておられたんですが、最近他に出る事が多くてくたびれて。
吉岡 出席率はどうですか。
福田 いいと思いますね。それとは別に、玖北の過疎地域だけの小さな会ですが町立の2つの病院の先生と症例検討をしたり飲む会を作って、2か月に1回くらい集まっています。
吉岡 車の時代ですから、行政区画を越えて講演会などに参加できますね。
福田 こういうことはほとんど岩国といっしよですね。だから医師会病院の研究会などにも玖珂郡の先生がほとんどいっしよに出ておられます。

吉岡 いわゆる懇親会や親睦会はいかがですか。
福田 今は少ないですね。前は旅行をしていたんですが。ただ、ゴルフの会で年1回旅行はしています。
吉岡 講演会の後でお酒を飲むというのは・。
福田 時にはやっています。それと忘年会ですね。それも講演会の後やりますから。ただ、ネオンサインがありませんので、二次会、三次会はほとんどありません。

吉岡 次に介護保険のことですが、行政との問題がものすごくあると思うので、さきはど先生がお話しされた玖西が玖珂町と周東町、玖北が美和町、美川町、錦町、本郷村、別々に動いているんですか。

福田 別々です。玖西、玖北で別の合議体ですが、医師会が同じだから同じやり方でやってくれとお願いしています。構成は少し違いますが。

 「痴呆、問題行動例1次判定補正基準」というのを吉岡春紀先生が作ったんです。これは全国的に有名になっていますけど、これをもとにして玖北も玖西も元気な痴呆のデータを出して、周南医学会に出したり、吉岡先生がいろんなところに呼ばれて講演したり、佐賀の方でもその方式を参考に新しい基準を作成したりしています。吉岡先生はコンピュータに詳しいから、医師会のホームページは県下の郡市医師会で一番早く開いたし。

訪問看護ステーション
 それから、玖珂郡の事業が一つあります。訪問看護ステーション、これは前々会長の藤中会長の頃、訪問看護ステーションを作ってくださいとお願いしていたんですが、しばらくたって私の時に玖珂郡医師会もいっしよにやってくださいということになりました。周東町、玖珂町、玖珂郡医師会の三者で平成10年にオープンしました。なんとか経営は成り立っています。

 今は主に周東町がやって、玖珂町と医師会が応援という形です。玖珂郡医師会は赤字が出た場合は、いくらまではバックアップできるということで。なぜ私たちを入れたかというと、訪問看護には医師が紹介した患者しか行けないから、医師会を入れると私たちが紹介する、医師会も本気になってくれるだろうと。

吉岡 周東町が実際にやっていたら、独立した有限会社のような。
福田 形としては周東町の町立です。だから今困っているのは、職員を一人増やしたいんだけど、町の職員は増やしたらいけないんですよ。臨時でもだめで、パートならいいというんですよ。だから、職員一人であとはパートで回しているんですけど、パートとなると夜間とかある程度の責任がとれないでしょう、だから今も大変なんですよ。
吉岡 そうすると町立も良し悪しですね。
福田 こういうことなら第三セクターでやればよかった、玖珂郡医師会だけでもすればよかったんですが。ただ、私たちのような小さな医師会ではそのようなパワーはありません。

吉岡 さきほどホームページの話をされたんですが、昨年、地域医療情報化推進事業を行われましたね。
福田 県医師会から急に出せと言われて大騒ぎで申請をして、昨年の秋に10台のパソコンに補助をもらいました。現19名でネットワークを作っていますが、やりとりまでいかないんですよ。なかなか開かない人がいて、わざわざ電話やファックスでメールを見てくださいと言ったり。
 また、副会長の吉岡先生が主管となって作ったKIMNETというメーリングリストがあります。岩国、柳井、光、大竹の医師会員や勤務医が110名前後入っています。

  KIMNETの意味は、「玖珂 岩国 medical Network」の意味で、玖珂で作ったからKが先なんです。山口県東部の医療情報や保険の問題、趣味のことなどを情報交換しています。

吉岡 玖珂郡医師会長としての基本方針などはありますか
福田 私は小使いみたいなものですけど、私が医師会に入った時から、家族的なものすごくなごやかな雰囲気ですね。それをそのまま引き継いで、みなさんが好き勝手なことを何でも言える、難しいことばっかりやらずに、楽しいことをやろうという会でいいんじゃないかと思っています。私自身がみんなを引っ張っていこうというのではなく、みなさんといっしょに考えて、いっしょに進んでいこうというほうが、私はいいと思います。

吉岡 先生は小児科ですね。
福田 そうです。
吉岡 ちっちゃい子で大変ですね。
福田 いや、今は老人科なんですよ。美川町の美川福祉会が特養を作るから理事長をしてくれと頼まれて、しかも嘱託医をやらされて、年寄りのことが忙しくて。また子どもも少なくなりましたから。

県医との連携

吉岡 郡市医師会と県医師会との連携ですが、これについてはいかがですが。
福田 日医との連携というわけでもないのですが、吉岡春紀先生が日医総研の主任研究員で由布施町出身の前田さんとインターネットでやりとりしています。
 私は県医師会にはものすごく長く出ているわけですよ。
 昭和58年に玖珂郡医師会の理事になって、何かの担当になって、その頃から出ているわけですよ。うちに県医の理事がいないから、どこまで県医師会と連携がとれているかどうか、他に比べていいかどうかよく分からないですね。ただ、前よりはいいんじゃないかと思うんです。

 要望はいろいろありますけど、前に浜田先生、江本先生も言われていましたけど、今日の会議(郡市医師会長会議)でも、伝達事項は早くみなさんに知らせたいというのは解るんですけど、急がないものだったら事前に資料を配って、特に問題のありそうなところだけ解釈をつけて送ってもらって、それに対して質問があれば県に出すような形がいいのではないでしょうか。
 また、県・郡市役員だけのクローズドのメーリングリストを作って、そこで意見交換することもあってもいいと思います。今日でも、あとの時間を考えながらだと、「ここで出すことはないかな。他に言いたい人があるから黙っておこう」ということがあると思うんですよ。
 ただ、昔のいろんな会議では、上意下達的なところがあって、ぱーっと言われてそれをはいはいと聞いて、持って帰ってみんなに伝達するだけだったのが、今は協議時間も延びて、今日もいろいろな意見がありましたし、他の会議に出席されている先生方に聞いてみても、自分達もそう思うという答えがありましたから、非常に良い傾向だと思います。

 意見要望を言ったことに対して、以前はこうだからダメですという答えでした。今は県医の理事の先生方が、こういう道があるかもしれませんけど、ちょつと待ってください、がんばってみますと、詳しく調べて非常に親切丁寧にお返事を出されますので、昔に比べたら格段と違いますよ。
吉岡 時代の違いでしょうか。今はみんなで意見を交換して、良い知恵を出そうという考え方なんでしょうか。

福田 それともう一つ、これは昔言ったことがあるですが、最近では介護認定審査会の委員報酬は市町村と医師会が協議して決めるわけです。その他予防注射の料金などもありますが、どこの郡市がどのくらいで交渉しているということを県医師会に聞けば解るようなシステムを作ってもらうといいと思います。例えば乳児健診も今は決まっているけど、今後バラバラになる可能性があるでしょう。もっと情報をリアルタイムで入れてほしいと思います。

福田先生の趣味

吉岡 最後に先生自身のご趣味やプロフィールを伺いたいと思います。

福田 私は何でもちょっとずつやりましたからね。やっていないのは空を飛ぶことぐらいですか。これはやりたいけど、いまさら空飛べないからだめですね。模型ではいろんなのを飛ばしましたけど。大学に入ってグライダー部に入ったんですけど、部員が私一人だったんで夏まで休部だと言われて。しようがないので野球部とジャズバンドに入りました。

 それから映画をよく観ますね。洋画が主なんですけど、スカッとするものが一番いいですね。うちはみんな好きですね。吉岡春紀先生も、どつちが先に見に行くかというくらいです。

吉岡 あとはコンピュータ
福田 娘達と孫の写真をやりとりしたり、細工をしたり、いろんなことをやります。
吉岡 先生のお生まれは。
福田 玖珂郡美川町です。父が俳句をやっていましたので、月1回土曜日の夕方、私の家で南桑同人句会というのがありまして、岩国の玉田太郎先生も来られていたんですが、早く着かれて時間があるから釣りをされて、私はバケツを持って、釣った「はえ」を拾う役なんです。土曜日の午後は玉田先生の腰巾着でよくくっついていました。

吉岡 先生ご自身も鮎釣りをされるそうですが。
福田 帰った頃はちょつとやったけど今はやりません。子どもの頃はしょつちゅう昼から夕方まで潜って魚を捕りに行っていました。海はアクアラング、スキューバ、水上スキーといろいろやってみました。模型飛行機もHゲージから0ゲージからなんでもちょっとずつつついていました。ただ、今は下手なゴルフぐらいです。

吉岡 本日はどうもありがとうごぎいました。

 


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