周南医学会シンポジウム

「診療に役立つインターネット活用法」


  司会               岩国市 錦病院 玉田隆一郎

 

  はじめに インターネットとは。電子メール・WWWのサービス。


1.「診察室の情報環境の変遷 これまで・これから」

     下関市 吉本医院 吉本正博

 従来のレセプトコンピュータ(以下レセコン)はオフィース・コンピュータをベースとした専用機であったために、パソコンとはデータの互換性に乏しく、せっかく入力した患者情報をパソコン用ソフトで利用することが困難であった。しかし最近のパソコンの性能向上はめざましく、パソコンをベースとしたレセコンが増えている。今後は診療所においてもパソコンを中心とした情報環境が当たり前の時代となるであろう。

 例えば最近まで、開業医にとって医療情報の収集と検索は、きわめて困難で、かつ大きな問題であった。しかし、CD-ROMによる電子出版は、保管スペースの問題の解決と検索の容易さをもたらし、インターネットの普及は、居ながらにして世界中から最新の情報を手に入れることを可能とした。インターネットの診療への応用については、現在、色々な試みが行われている。既に病診間の連携にインターネットが活用されている。インターネットを利用した会議システムが普及すると、大学病院との症例検討会なども企画されるに違いない。電子カルテが普及すると、入院時の検査データや画像データなども診療所から取り出せるようになるはずである。開業医も意欲さえあれば、地域格差により医学の進歩に取り残されるということもなくなる、そういう時代が来つつある。


2.「医師会ホームページの役割と問題点」

              玖珂郡 玖珂中央病院 吉岡春紀

 日本医師会をはじめ都道府県医師会、郡市医師会のホームページ(HP)も徐々に増えており、今年10月1日現在、16の都道府県医師会で公開され山口県医師会も先日10月1日に正式公開した。郡市医師会のHPは現在109医師会が公開し、月々新しい医師会HPが公開されてる。 県内では玖珂郡医師会のHPを平成8年8月に公開したのが最初で、今年8月に下関医師会・9月には萩市医師会がHPを公開した。

「医師会のホームページの役割」としては医師個人個人のレベルの情報化を結び付け医師会の地域情報ネットワークシステムを構築することにあると考えられ、医師会会員間の情報交換・病診連携・診診連携や地域医療レベルの向上に有用だと思われる。

 医師会HPで何をするか、特に情報発信としてはHPに何を載せるかすなわち「HPのコンテンツ(内容)の決定」が問題であると考えられる。会員向けの情報とするのか、一般向けの情報を充実するのかの検討も必要である。例えば「健康情報」などの同じ内容を、多くの医師会が載せても新鮮さがなく努力の無駄もあるので今後はコンテンツ(内容)の分担やリンクが必要となると考えられる。

 今後の医師会HPの方向として、一般市民に向けての広報活動としては休日当番や医療機関案内・健康情報・住民検診案内などの医療情報の発信だけでなく、市民からの医療相談にも対応できる双方向制のシステム作りも必要になると思われる。これには多くの会員の参加が不可欠で、会員間の電子メールでの連携が必要となる。また全ての会員が、すぐにパソコン通信や、インターネットを開始することは現実的ではなく急ぎすぎてパソコンを使えない会員に不利になるシステム作りは行わないようにしないといけない。周辺の通信環境を整えながら、インターネットの面白さ、便利さなどを少しずつ理解してもらうよう努力する事から始めるべきだと考えられる。また各地のパソコン同好会などの活用も必要で経験者を医師会に登用し、パソコン講習会の開催・機種の調整なども行う必要がある。

 詳細な内容は「岩国・玖珂ドクターズマック同好会」の 医師会ホームページの役割と問題点


3.「医療情報システム構築について小野田市での取り組み」

    (電子メールの使用を中心に)

                小野田市 瀬戸病院 瀬戸信夫

 電子メールには会議、手紙、電話、ファクスにない便利な点があります。ただしファクスと同様ある程度機器が普及しないと役に立ちません。

小野田市では昨年春に OMN(小野田メディカルネットワーク研究会)を数名の有志でたち上げ、パソコンの普及、医師会としての情報の取り扱い方、病診、保健・福祉とのネットワーク、さらには救急医療情報システムや電子カルテなど様々な討議をしてきました。 これを受けて、昨年秋に初心者向けのパソコンを15人の医師に同時に購入してもらい、インターネットに接続しました。なかにはキーボードアレルギーの先生もありましたが、酒の席などで少々強引な勧誘もいたしました。同じ機種ですのでレッスンなども容易で、ほぼ全員が約2カ月で画像のやりとりを含め、自在に電子メールを利用できるようになりました。なかには本人は操作されないが、奥さんや娘さんが使いこなしているというケースもあります。 この仲間を中心に今年3月宇部・小野田の医師40で、you-med というメーリングリスト(一斉同報システム)をつくりました。管理はパソコンに詳しい開業医が行っています。現在メンバーは50名となり、1日平均4通のメールが行き交い便利に利用されています。病診の連携にも役立っていますが、パソコン購入を渋っておられた先生が「パソコンってすばらしい」というメールを送られたのには少し感激しました。

 現在小野田市では開業医、勤務医とも半数以上の人が電子メールを利用できる環境になりましたので、この10月から保健・医療・福祉ネットワークをたち上げました。歯科医師会、薬剤師会とともに、保健センター、社協、行政(福祉課、健康増進課)、消防署、特老、老健、在宅介護支援センター、学校保健室などにパソコン端末をおきまずは電子メールを利用しての意思の疎通を図るつもりです。来年には独自のサーバーを利用しデータベースの運用を開始する予定です。

その他パソコン利用上の問題点や注意点も含め、小野田市における経過をご報告しました。


4.「開業医のインターネット活用法」

            徳山市 千治松呼吸器科循環器内科 千治松洋一

 私は、約8年前よりパソコン通信を開始し、新しい情報を得ることに興味をもち行なってきた。しかしパソコン通信は限られた情報しかなく、興味を無くしてきたところに、インターネットという新しい情報伝達の手段が登場してきた。平成7年にはWWWを閲覧するためのブラウザにネットスケープが利用できるようになった。またISDNが利用できるようになり、1年前よりISDNを開始した。

 毎日の生活は、朝、診察室にあるコンピュータのスイッチを入れ、電子メールの確認から始まる。電子メールは使用すると便利である。インターネットに加入している相手であれば、世界中の人と手紙のやりとりが可能である。WWWを使用して情報の検索が可能である。WWWは、文字や静止画像だけでなく、音声を送ることのほかに、ショックウエーブなどを使用して動画を送ることも可能である。

 しかしインターネットに入ると情報の洪水であり、その中から自分に最も必要な情報を得るにはテクニックが必要である。情報が記録されているところを示すURLを知る必要がある。URLを検索する方法としてサーチエンジンがある。インターネットは情報を発信できることが、さらにその有用性を高めている。一年前より、自分のホームページを開いた。

まとめ

インターネットはコンピュータ技術を使用することにより世界の情報をいながらにして手にすることができ、また自分からの情報発信も可能とするtoolであり、これからの発展が期待される。


5.「専門医間のコミュニケーションとしてのインターネット」

               光輝病院脳神経外科 横山達智

 私たちは1996年7月よりホームページを掲載し、脳神経外科医間のコミュニケーションの手段としてインターネットを利用している。

現在行っている活用法の柱は、

1)電子メールを利用した、メーリングリストによる情報交換         

2)症例検討会            

3)県内および全国学会の研究会の案内 

4)県内の脳神経外科のある病院の紹介

の4つである。

 現在一番活用しているのは1)のメーリングリストであり、これにより、各病院間の連絡や、情報交換を行っている。インターネットの最大のメリットは、画像を転送することにより、距離の離れているもの同士でもお互いに同じ画像をみて、検討できるという点である。しかも、比較的安価で、電話線を使うという汎用性が、最大のメリットである。もっとも、画像の微細な部分は、それを閲覧するブラウザで、全く違って見えるという問題点もある。しかし、脳神経外科領域のCTやMRI画像では、解像度の点では実用性に耐えうると思われる。 また、プライバシーおよび個人情報のセキュリティに配慮する必要がある。

これに対処する方法として、画像を転送する場合、a)会員全員に電子メールに添付して送りつける方法、b)FTPでホームページ上に掲載して、他のページからリンク出来ないようにして、URLのみ会員に知らせる方法、c)パスワードなどのgate wayを用いる方法等がある。ただ、a)の方法はパソコンのOSが異なると、うまく画像が閲覧できない場合があり、一番簡単な方法はb)の方法と思われる。

今後ともさらにインターネットを利用したネットワークを拡大し、) 医療の細分化(専門性)に対するその統合への利用・)医療情報の公開・。)情報の即時性を利用したインターネットジャーナル・「)遠隔地医療・」)災害時医療・、)救急医療といった方面への利用を推進していきたいと考えている。

詳細な内容は横山達智先生の インターネットジャーナル


6.「診療に役立つインターネット活用法:大学病院医療情報部の役割」

      山口大学医学部附属病院 医療情報部、教授・部長 井上裕二

1.大学病院医療情報部とは何をするところ?

 医療情報部は大学病院のシステム化を促進し、診療、教育、研究および病院運営の向上をはかるために設置された中央診療施設の中の一部門です。中央診療施設には検査部、放射線部、手術部などがありますが、医者が診療を進める上で情報技術も使っていこうというわけです。

2.病院のコンピュータシステムとインターネットの関係?

 病院情報システムは、患者の診療を効果的に実施するため、また病院職員のコミュニケーションを円滑に進めるために機能しており、プライバシイ保護とセキュリティ管理には細心の注意を払っています。様々な情報資源を誰もが自由に利用できるインターネットとのゲートウェイは一カ所だけ医療情報部に設置されています。

3.大学病院と地域の医療機関、医師会とのネットワーキングはどうなる?

 大学病院もネットワーク上では医療機関の一つにしか過ぎませんが、すべての医療機関や医師会にサーバー(ネットワーク上のデータ交換やコミュニケーションの基地になるコンピュータ)を置けるわけではありませんん.医療情報部のサーバーを活用し、一歩、あるいは半歩先んじた情報技術を試験的に利用することも可能です。Group-ware, Computer Telephony Integration,などが新しいキーワードですが、講演の時にはみなさんお使いかもしれません。

4.大学病院として何ができる?

 21世紀医学・医療懇談会は7月1日に第三次報告を文部省に提出しました。そこでは、”大学病院に期待されるもの”として、情報ネットワークを使って地域医療機関との連携を推進することが明示されました.従来の役割から一歩踏み出すことができることを期待しています。


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