便秘の話
―「宿便」に気をつけて食事量減らし、水分を多く―

宇部市医師会外科医会


 今回は普段、我々に身近な便秘についてお話してみようと思っています。

 一般には便秘というと、便が毎日ないしは数日排泄されないこととお考えの方が多いようですが、成書によると便秘の定義とは数日以上も排便なく、かつ排便感覚が不規則になった場合とされています。この場合、程度の差はありますが、腹部膨満感、不快感、下腹部痛、あるいは頭痛やめまいを伴うこともあり便の状態は水分量が減り、硬くなるのが普通です。

 便秘はその原因から大きく機能的と器質的にわけられます。機能的便秘とは薬、食事、生活習慣などにより麻痺制ないし痙攣制となるもので俗にいう習慣性便秘はこの中のひとつです。器質的便秘とは腸管自体の異常(例えば癌、巨大結腸症、S状結腸過長症、腹部手術後などの癒着によるもの)や腸管外の異状によって生じる便秘のことです。

 いずれのタイプも便に関する症状としては便量の減少、排便間隔の延長や不規則、硬くてころころした便(兎糞)、有形便と下痢便(形にならない便から水様便まで)も繰り返しなどがあげられます。また、腹部症状として腹部膨満感、食べるとつかえる感じ、腰背部鈍痛、胸の圧迫感などさまざまです。

 便秘のとき必要な検査としては器質的な異状がないことを確認するために、バリウムと空気を大腸に入れて調べる注腸検査、または大腸内視鏡検査をされておく方がよいと考えます。

 日常診療をしていて、最近、気付くことは排便としては毎日あるのですが、便秘のときと同じような症状を訴えて来院される患者さんが増えていることです。このような患者さんは、「便は毎日出ているし、一日数回出てよく出ます。食欲もありますが食べると胸のあたりがつかえたような感じがします」などと訴えて来院されますが、このような状態は大腸の中に宿便(腸の中に便が残った状態)が多く、これは動的便秘状態で食べた量に見合った排便量がなく、毎日少しずつ便が腸管の中に動的平衡状態として残ったためにおこる便秘症といえます。

 このような場合、腹部レントゲンを撮ってみますと、たいてい大腸内に便がたくさん残っているもので、症状を自覚する依然に排ガス「オナラ」の回数が増えていること、一回の排便回数が複数回で排便の終わりころはゆるく形にならない便になることが多いようです。

 便秘に悩まれておられる方のほとんどはいろいろな方法をすでに試されておられることでしょう。では便秘に対する対処法は、まず早いうちに宿便とわかるようになること。

 その徴候は「オナラ」の回数が以前より多くなることがあるはずです。ただし、オナラの出やすい食物(サツマイモ、豆、バナナなど)を摂取したときは別です。また、便が有形便から軟便になってきたときも宿便徴候のことがあるのです。次に食事のことですが、便秘の方は食物繊維を多くとることを勧められますが、便秘の状態では多くとりすぎるよりも普通程度とし、一時的に食事量を減らして水分を多く取ることが必要と考えます。食物繊維を多くとることを勧められるのはむしろ便秘予防のためですが、同時に水分を十分に取ることが大切なことです。そのうえで、下剤を少量内服することと十分な水分をとることが、下剤が「癖にならない」ための方法ではないでしょうか。