眠れないよう
―まず規則正しい生活、1人で悩まず気軽に相談を―

宇部市医師会精神科医会


 古来睡眠は、健康と美容の妙薬として貴ばれてきました。睡眠は肉体的、精神的元気を回復させ、女性の肌に艶(つや)と潤いをもたらし、子供の成長を促す大事な行動と言えましょう。ところが最近「眠れないよう」と訴える方が増えているようにみうけられます。

 そこで、睡眠と不眠症について考えてみましょう。そもそも睡眠とは如何なるものであるのかについては、様々な研究にもかかわらず目下のところ決定的なことは分かっていませんが、何種類かの神経伝達物質が関与し、中枢神経の複数の部位に関係し、人の概日リズム(サーカディアンリズム)と大いに関係があるというところまで分かってきました。

 人の脳内には二種類以上の時計があり、それらの時計が同調してサーカディアンリズムを生み出し、各種の神経伝達物質の量を時間にあわせて調整することにより、心地よい睡眠をもたらしているものと考えられます。このリズムや、神経伝達物質の量に混乱が生じると「眠れないよう」状態になるものと考えられています。

 具体的には次のようなものがあります。疼痛(とうつう)、掻痒(そうよう)、頻尿、呼吸困難等をもたらす身体疾患によるもの。時差、交代制勤務、不適切な睡眠衛生などリズムを狂わせるもの。精神的ストレス、精神的ショック,生活状況の大きな変化など心理的なもの。アルコール依存症、不安神経症、恐慌性障害、うつ病、精神分裂病などの精神病的なもの。アルコール、抗ガン剤、降圧剤、自立神経作用薬、カフェイン、中枢神経作用薬、ニコチン、ステロイド剤、甲状腺製剤など薬物によるもの。

 以上のように、実に様々な原因で睡眠障害が起きることが理解できます。では、どうしたら快適な睡眠ができるのでしょうか。

 まず規則正しい生活をして、日中には十分太陽の光を浴び、夜は決まった時間に寝るようにすることが大切です。また、コーヒーやお茶、アルコールなどの飲みすぎには注意が必要です。入眠時にはリラックスし体型にあった寝具を使用することも重要です。とは言うものの、快適な睡眠を楽しんでいる幸福な人はあまり多くはないようです。

 昔から「眠れない夜のために」と名付けられた処方箋が無数に作られてきました。それでも、どうしても眠れないときがあります。そのようなときには病気としての不眠、いわゆる「不眠症」を考慮する必要があります。医学的に「不眠症」とは、入眠困難(二時間たっても寝付けない)、中途覚醒(一晩に二回以上目がさめる)、早朝覚醒(普段より二時間以上早く目が覚める)および熟眠感のなさの四項目のうち、ひとつ以上の症状を認め、不眠の訴えは少なくとも週に三回以上あり、一ヶ月以上持続している場合を言います。

 病的な不眠は大変苦しい物です。眠れないとの先入観があり、不眠を過剰に気にして苦悩し、社会的、職業的にうまく行かなくなってきます。このようなときには早めに専門医に相談してください。適切な治療によりさわやかな睡眠を取り戻すことができたり、もっと重症な病気が見つかる可能性があります。特に、身体的、精神的病気や、薬物が原因の場合は適切な医療が不可欠です。どうか1人で悩まないで気軽にご相談ください。