マムシに咬まれたら

宇部市医師会外科医会


マムシは沖縄を除く日本の全土に分布しており、春から秋とくに7〜9月に多くみられます。近辺に川や用水路がある田畑や農道、藪に多く出現しますが、宇部市では市街地にも時々出現するそうです。ほかの蛇に比べ体長は45〜60cmと短く、胴回りは太めで尾が短い。体色はさまざまですが、典型的なものは灰褐色〜暗褐色で背に銭型の斑紋が並んでいます。頭部は吻端を頂点とする三角形のものが多く、その後方の両側に毒腺を持っています。ハブと同様、上顎の先端に2本の長い毒牙があり、この牙で咬むことにより毒が注入されます。毒の量は少ないが毒性そのものはハブの2〜3倍はあります。年間1000人以上が受傷しその内10名前後(約1%)が死亡すると言われていますが、被害を届ける義務はなく、国や県も正確な件数は把握していません。

 症状としては、噛まれた直後から数分後に焼けるような激しい痛みがあります。通常傷口は2個でたまに1個のこともあります。咬まれた部分が腫れて紫色になってきます。腫れは体の中心部に向かって広がります。皮下出血、水泡形成、リンパ節の腫れも認めます。重症例では、筋壊死を起こし、吐気、頭痛、発熱、めまい、意識混濁、視力低下、痺れ、血圧低下、急性腎不全による乏尿、血尿を認めます。通常、受傷翌日まで症状は進展し、3日間程度で症状は改善していきますが、完全に局所の腫脹、こわばり、しびれなどが完治するまで1カ月ぐらいかかります。ただし、いったん重症化すると腎不全となり死に至ることもあります。

 マムシに咬まれた場合、まず噛まれた傷口より心臓側を布などで軽く縛り安静にして下さい。これは毒が全身に回るのを遅らせるためです。あわてて走ったりすると毒が全身に回りやすくなります。次に、傷口から血を絞り出すようにして毒を体外に出します。水があれば血を絞り出しながら洗浄して下さい。口で毒を吸い出す方法は、口付近に傷があるときには禁忌です。

 以上の処置を行っている間に救急車を呼ぶか、速やかに救急指定病院を受診して治療を受けて下さい。病院では受傷部位の切開、洗浄、点滴等を行います。重症例ではマムシ抗毒素を投与する場合もあります。重症となった症例は、ほとんどが受傷から数時間たってから病院を受診した場合です。噛まれた後すぐに顕著な症状がなくても、3〜4時間後に重篤な症状をおこしてくることがあるので、必ず早期に医療機関を受診して下さい。