鼻血について

宇部市医師会
耳鼻科医会


 鼻血の多くは鼻の穴の入り口から1センチメートルほど奥の内側にあるキーセルバッハ部位から出ます。ここは薄い粘膜の下に密に毛細血管が集まっていて指でほじったり、ティッシュペーパーで鼻をかんだりしたとき容易に傷ついてしまい出血しやすくなっています。
鼻そのものは乾燥した外気を加湿する機能がありますが、キーセルバッハ部位は鼻の穴の入り口近くにあるために空気の乾燥しやすい冬季ではそこの粘膜が乾燥して出血しやすくなると思われます。

 また、鼻を強打した場合でもキーセルバッハ部位の血管が傷ついて出血することもあります。
小児ではアレルギー性鼻炎に伴ってみられることも多く、チョコレートの食べ過ぎなどでのぼせた時に出血することもあります。
 小児の鼻血はあまり心配する必要がないことが多いのですが、まれにオスラー病などの血管の遺伝性の病気が原因であったり、白血病、血小板減少症などの血液の病気が隠れていることもあるため、長時間鼻血が止まらなかったりたびたび出血するようであれば血液検査も必要となります。
 これに対して大人の鼻血はキーセルバッハ部位以外から出血することもあり、鼻の奥の上咽頭と呼ばれる部位や副鼻腔の腫瘍が出血点となることもあります。
 また、年配者では高血圧、動脈硬化、肝臓病、腎臓病などの内科的な病気で鼻血が出やすくなることもあります。もちろん小児の鼻血と同様に白血病などの血液疾患も考慮する必要があります。
 特殊なケースとして女性の代償性出血というものがあり、月経の欠如を補うかのような鼻血が出ることもあります。
大人、小児ともに気を付けたいのが、膿性のハナに血が混じっている場合です。
こういったケースでは大人では悪性腫瘍、小児では鼻の中の異物に注意が必要です。

次に鼻血の止め方を述べます。
 少量の鼻血であればティッシュペーパーや綿を出血している鼻の穴に1センチメートルほど詰めれば止血できると思われます。それでも止まりにくければ両方の小鼻をつまんでキーセルバッハ部位を圧迫してみましょう。その時顔を上に向けると鼻血がのどに下りて飲み込んでしまうので、少しうつむき加減にするとよいでしょう。鼻血を飲みこんでしまうと血圧が上がり血が止まりにくくなるという人もいます。
以上の方法で止血しなければ耳鼻科を受診してください。耳鼻科ではガーゼや止血材を鼻に詰めて止血したり、電気メスやレーザーで出血している部分を焼いたりすることもあります。

 鼻血といえば2014年に「美味しんぼ 福島の真実編」という漫画出版を契機に放射線被爆と鼻血との関係が話題になったことがありました。最近、この漫画の作者の雁屋 哲氏が長い沈黙を破って『美味しんぼ 「鼻血問題」に答える』(遊幻舎)を出版し、その当時氏が受けた批判に反論しています。その中で、チェルノブイリでの事例を含めて放射線で鼻血が出たと思われる四つの実例をあげています。そのうちの一例は2012年11月に岡山大学、熊本学園大学、広島大学の研究者による合同プロジェクト班が行なった疫学調査であり、この結論は信頼できるものではないでしょうか。
 また、福島の原発事故のあった2011年以降Googleトレンドで鼻血を検索する人が増えているともいわれています。このことは2011年以降鼻血を出してその原因を知り、何とか鼻血に対処しようとしている人が増えているとも考えられます。
 鼻血と放射線被爆との因果関係の有無やその機序については今後の検討を待たなければならないとしても、世界の放射能汚染の現状を考えると今後も放射線被爆と鼻血との関係にとどまらず、放射能被爆との関係が取り沙汰されている白血病、ガンなど多くの病気についてもその発生動向について注視していく必要があるのではないでしょうか。