気胸について

宇部興産中央病院外科
多田耕輔



気胸について
 気胸は何らかの原因により肺から空気がもれて胸腔の中に空気が貯まる疾患で突然の胸の痛みや呼吸困難などの症状で発症します。正常では息を吸うと胸郭が広がり胸腔が陰圧になり肺が広がり呼吸ができますが気胸になると胸腔内に溜まった空気が邪魔をして肺が十分に拡がらず、重症になると胸腔内の空気が増えて胸腔内圧が上がり心臓や肺を強く圧迫する緊張性気胸の状態になり高度の呼吸困難やチアノーゼ、ショックなど重篤な症状を示し緊急の処置が必要になります。

気胸の分類
 気胸には発症原因により分類され、若年で痩身の男性に多く、肺の一部にできたブラという脆弱な袋状の組織が破れて発症する自然気胸、肺気腫や肺がんなど肺の病気が原因で発症する続発性自然気胸、外傷などの原因で肺の表面や胸壁に穴が開くことによる外傷性気胸、そして生理(月経)の前後に発症し月経随伴性気胸という変わった気胸もあります。これは子宮内膜症が横隔膜に広がり、生理のときに横隔膜に穴が開くことにより空気が胸腔内に入り気胸を発症したり、また肺に子宮内膜症があり生理に際して穴が開くことが原因であると考えられています。気胸は女性には比較的少ないので、女性が気胸を起こしたときは、月経随伴性気胸の可能性を考えておかなくてはなりません。治療は手術とホルモン療法を行います。

検査
 胸部X線写真やCTにて診断します。なお、同時に気胸の原因となる肺病変の診断も行います。

治療
 肺表面にあいた穴が小さく、軽度の気胸であれば、安静のみで改善しますが、胸膜腔内の空気が多い場合は、胸腔内にチューブを入れて空気を抜く胸腔ドレナージを行います。空気の漏れが止まらない場合は基本的には手術が行われ、侵襲の少ない胸腔鏡手術が主流となっています。なお高齢であったり全身状態が悪く手術ができない場合は自己血液やある種の薬剤による胸膜癒着療法を行う場合もあります

予後
 自然気胸の予後は、適切な治療をすれば良好ですが、緊張性気胸は適切な治療を行わなければ死亡に至る可能性にある重篤な状態です。また肺の病気に続発する気胸や外傷に伴う気胸は、原因となった病気や外傷の程度によって予後は異なります。また自然気胸は再発することがあり、過去に気胸になったことがある方は過激な運動を避けるなどの注意が必要です。

 最後に気胸は緊急疾患であり重篤化する場合もあるため、放置せず、医療機関で適切な治療を受ける必要があります。