特発性血小板減少性紫斑病

有好内科クリニック
有好 浩一


 特発性血小板減少性紫斑病とは、免疫の異常によって止血に必要不可欠な血小板が減少する病気です。病的な出血を起こす疾患の一つであり、大きな内出血(紫斑)や下肢抹消の点状出血(1mm大の赤色、多数に出現)、さらに止血困難な鼻出血や口腔内出血といった症状によって発見されることが多いです。なぜ免疫の異常が起こるのか分かっていません。

 免疫システムの役割は細菌やウイルス等に作用し異物として排除することです。特発性血小板減少性紫斑病では自分の血小板に免疫システムが作用します。それによって血小板が破壊され、さらに血小板の産生も障害されてしまうため血小板が減少します。
 血小板は少ないほど出血し易くなります。血小板の正常値はだいたい15万以上ですが、1〜2万以下となった場合には要注意です。2〜3万以上あれば日常で問題となることはほとんどありません。5万以上あれば多くの手術は実施できます。

 特発性血小板減少性紫斑病は急性型と慢性型に分類されます。急性型は小児に多い型であり、ウイルス感染等をきっかけに発症しますが、ほとんどが自然に治癒します。一方、慢性型は成人に多く、経過は半年以上と長く、血小板3万以下の場合には治療の対象となります。
 出血症状が問題となりにくい場合には1〜2万程度に減るまでは経過観察されることも珍しくありません。ただし血小板が3万以上に維持されていても何らかの出血症状が体の負担となっている場合には治療開始となります。

 治療方法は表に示すとおり、標準的な治療薬はステロイド薬です。一時的には高用量を使用し、また長期間投与を必要とすることが少なくありません。治療効果の確認と共に副作用の厳格な管理が重要となります。ステロイド剤の効果が不十分な場合は血小板の破壊場所である脾臓を手術で摘出することもあります。特に胃のヘリコバクター・ピロリー菌が陽性である場合には除菌療法を行うと約半数で血小板回復を認めるため、治療の負担が比較的に小さいこともあり、最優先で行われる治療方法です。

 治療困難では免疫抑制剤やトロンボポエチン受容体作動薬、リンパ腫の治療薬として開発された抗体医薬等による治療が検討されます。近年高い治療成績を期待できる薬が増えてきました。