4月1日から後期高齢者医療制度が施行され1カ月が経ちましたが、いまだに患者さんそ して医療現場は混乱の渦中にあります。この制度は03年小泉内閣時代につくられ、06年医療制度改革関連法案のひとつとして強行採決されました。新制度は決して高齢者が安心して長生きできるように創られたのではなく、医療費削減が最大のねらいです。06年度の国民医療費は約34兆円。そのうち高齢者医療費は約11兆円で、全体のおよそ3分の1です。そこで、さらなる高齢者医療費増加対策として、75歳以上の高齢者を別の医療制度に押し込んで、医療費をコントロ−ルしやすくしようとしているのです。
後期高齢者医療制度はいくつもの問題点を抱えているのですが、その主なものをまとめてみます。
1.新たな保険料の発生
75歳以上の後期高齢者で、給与所得者の扶養家族として以前は負担ゼロの人にも新たな保険料負担が発生することになりました。全国平均的保険料は月額6200円ですから、介護保険料と合わせて2カ月おきに2万円以上が年金から天引きされていきます。ちなみに、後期高齢者医療制度には約1300万人が新たに加入する予定になっておりますが、そのうち今まで被扶養者だった75歳以上の高齢者約200万人が保険料の負担を強いられるようになり ました。
2.資格証明書の発行
保険料を年金天引きではなく現金で納める人(年金月額15000円未満の場合)は、保険 料を1年滞納すると、保険証を取り上げられ、代わりに資格証明書が発行されます。この 資格証明書ですと、かかった医療費を全額窓口で支払わなければなりません。また未納保険料を全額支払わないかぎり保険証は返してもらえません。さらに特別な事情なしに1年6カ月間保険料を滞納すると、保険給付の一時差し止めの制裁措置もあります。3月までの 老人保健法では、資格証明書の発行は実施してこなかったことと比べると、苛酷な仕打ちです。
3.保険料自動引き上げの仕組み
新制度を支えるのは、1割が75歳以上の高齢者が払う保険料、4割が医療保険からの支援金、5割が国や自治体からの公費です。従って医療費が増えれば保険料が値上げになりま す。さらに後期高齢者の人数が増えるのに応じてこの負担率も引き上がる仕組みもあります。15年度は10.8%が推計されています。将来、高齢者の負担は際限なく増え続ける可能性があります。
4.かかりつけ医構想
高齢者担当医が新たに導入されようとしております。これは複数の病気にかかっている75歳以上の患者さんを、1人の担当医が管理し、複数の医療機関に受診させないようにす ることで、高齢者医療費を抑えることがねらいです。具体的には、診療報酬に慢性疾患をもつ高齢者を対象として後期高齢者診療料が導入されたのです。これは主病を診る1人の 医師(高齢者担当医)しか算定することができません 。検査や処置をいくらやっても後期 高齢者診療料という定額にしようということです。これは患者さんにとって非常によいもののように報道されていますが、実は手厚い治療をするほど、医療機関の持ち出しになることから、医療現場に粗診粗療を強要するものです。「後期高齢者だから、1カ所の医療 機関で、そこそこの医療で我慢すべきだ」と政府が考 えているとしか思えません。
宇部市医師会は、このかかりつけ医構想は、フリ−アクセス(自分が必要とする医療機関に自由にかかれる権利)を妨げ、また年齢によって受けられる医療内容が異なるという差別医療を強いるものであると考え、会員に対し高齢者担当医にならないように呼びかけています。