2005年スギ花粉飛散予測
昨年(2004年)のスギ花粉飛散は,県内26測定機関の平均値として200〜300個/cm2の予測に対し,実際も予測通りの260個/cm2という非常に少ない総数で終了しました.この値は1994年に次ぐ少なさでした.ヒノキ科花粉も30個/cm2と,こちらはこれまでで最も少ない飛散総数でした.
それでは本年(2005年)はどうでしょうか.スギ花粉を蓄える雄花の分化は前年夏の気象条件に左右され,気温が高いほど,日照時間が多いほど,降水量が少ないほど,雄花が多くなる傾向にあります.従って,一般にこれらの条件がそろえば翌年のスギ花粉の飛散数は多くなります.2004年の夏は全国的に大変な猛暑で,スギの花芽の分化には非常に有利な条件となりました.加えて前年の花粉の少なさですから,休養十分のスギの木がたくさんの雄花を着けることは想像に難くありません.そして例年通り11月にスギの木の観察をしたところ,やはり雄花の多い木が多かったのですが,中には例年多いにもかかわらす今年は雄花の少ない木もあり,これが着花率の平均を下げたために,筆者がこれまで観察してきたスギの木の11月の着花状態から予測される,県内測定機関の平均スギ飛散総数は3000個/cm2程度となりました(→図).しかしながら,夏の気象や県内他地区の着花状況を勘案し,着花率の低い1箇所の木を例外的と考えると,それ以外の木の着花率から求められるスギの予測数は,1995年の大飛散に次ぐ飛散数となった2001年を上回る,3500〜4000個/cm2程度の値となります.2004年を含めた最近10年間の平均は約1800個/cm2ですので,このあたりを「平年の値」とすると,本年は「平年の2倍程度」の予測となります.
一方のヒノキ科ですが,昨年11月の時点ではっきりと花芽が確認できる木が多く,これまでで最も多くそして早く成熟している印象を受けました.全測定機関の平均ヒノキ科花粉数は2001年の1950個/cm2がこれまでの最多値ですが,本年はそれを上回るものと予測されます. 昨年9月7日の台風18号は県内に多くの被害をもたらしました.塩害による停電も記憶に新しいところです.そしてその塩害により秋の雑草はことごとく枯れてしまい,昨年秋はイネ科花粉もキク科花粉もほとんど飛散しませんでした.スギ,ヒノキも一部には塩害で枯れたものもあり,また倒木も認められますが,雑草に対するほどの影響はないようです.
例年の秋には11月に少数の飛散が認められる程度のスギ花粉ですが,昨年は同じく少数ながら10月から継続的に飛散しており,過敏な方は症状が出ております.12月下旬になっても飛散がとぎれません,少数の花粉でも継続して暴露されると,たとえ発症していなくても鼻粘膜の過敏性は亢進しており,本格的シーズンを迎えて例年よりも早く,少ない花粉飛散数で発症することもあり得ます.また,暖冬によりスギ花粉飛散開始日が早くなるとも言われております.さらにヒノキ科花粉も多いと思われますので飛散終了時期も遅くなることが予想され,スギ・ヒノキ科花粉症の方々には治療を要する期間の長い,辛いシーズンとなりそうです.
なお,毎日の「飛散状況・翌日の飛散予測」は,スギ花粉飛散開始宣言*の後,報告を開始します.
*スギ花粉飛散開始宣言・・・ その年、2日間続けて、1平方センチメートルあたり1個以上のスギ花粉が確認された場合、その初日を以って「飛散開始」を宣言することにしています。山口県では2月上旬になることが多いのですが、気温が高ければ飛散開始日が早まることも考えられます。1平方センチメートルあたり1個以下のごく少量の花粉飛散は「いわゆる飛散開始日以前にも」続くことがあり、人によっては花粉症の症状が発現します。
●過去のスギ花粉飛散開始日
平成16年2月16日
平成15年2月6日
平成14年2月3日
平成13年2月15日
平成12年2月11日
平成11年1月25日
平成10年2月7日
平成9年2月5日
平成8年2月11日
平成7年2月13日
平成6年2月7日