2007年スギ花粉飛散予測


山口県における2007年のスギ花粉飛散総数の予測

県医師会花粉情報委員  沖中 芳彦

 

 昨年(2006年)のスギ花粉飛散は、県内26測定機関の平均値として1500個/cm2と予測しました。これに対し、実際のスギ飛散数は1790個/cm2で、予測をわずかに上回る飛散総数となりました。これは、平年値1900個/cm2にほぼ近い値でした。ヒノキ科花粉はこれまでスギの半分以下の総数で、平年値は約700個/cm2でしたが、昨年はこれを上回る1000個/cm2の総数となり、スギの約60%に相当する数となりました。

 前年夏の気象条件からの予測では、2007年の西日本のスギ・ヒノキ科花粉総数は、前年の5075%で、平年の半分以下とされています。平均気温は平年並みでしたが、日照時間が短かったのが雄花芽の分化に不都合であると判断されたようです。しかし筆者は、例えば、夏の気象条件が良いから翌年のスギ花粉が多くなるのではなく、夏の気象条件が良く、さらに実際に雄花が多いからシーズン中の花粉が多くなるものと考えております。夏の気象条件が良くても、雄花の数がそれに比例しない場合もあります。例えば大量飛散の翌年などです。そのような理由で、筆者は、花粉数の予測には夏の気象条件よりも実際の雄花芽の着き具合を重視しております。ただし、雄花芽の観察はごく一部の木でしかできないことが弱点です。

 2006年の秋のスギ雄花芽の着花状況をみると、図1-1200511月撮影)と図1-2200611月撮影)は同じスギの木ですが、明らかに2006年の方が花芽が多く着いております。図2は、シーズン中のスギ花粉総数と前年秋のスギ雄花芽の着花率との関係を示したものです。棒グラフは左軸で、県内26測定機関のスギ総数平均値と宇部市の花粉数、折れ線グラフは右軸で、十数本のスギの木の着花率です。2003年のシーズン前にはほとんどの木で雄花芽が多く、2004年にはほとんどの木で少なく、2005年にはほとんどの木で多くなっております。このような状況であれば予測は容易なのですが、2006年のシーズン前には雄花芽の着き具合にばらつきがあり、予測と実測に多少の差が出ました。今回はさらにばらつきが大きくなっておりますが、平均着花率は前年とほぼ同程度で、これから予測されるスギ花粉総数は、県内の26の花粉測定機関の最近数年間の平均値である1900個/cm2に対し、1500個程度、すなわち平年をやや下回る程度の飛散総数となります。夏の気象条件を勘案するとこの数よりも少なくなる可能性もありますが、極端に少なくなるとは考えられませんので、2007年のシーズンも充分な花粉対策は必要と思われます。

 2006年のシーズンには、スギ花粉総数に対するヒノキ科花粉総数の割合が従来よりも増加しました。山口県ではスギよりもヒノキ科の方が植林面積が大きく、またヒノキ科は花粉を多く産生する樹齢に達してきているようです。ヒノキ科花粉が多くなると、スギ・ヒノキ科を合わせた花粉飛散期が長くなり、従って病悩期間も長くなります。今後はスギ以上に、ヒノキ科花粉飛散の動向が重要になるものと思われます。

図1−1 図1−2
図2


●過去のスギ花粉飛散開始日
 平成18年2月
 平成17年1月15日
 平成16年2月16日
 平成15年2月6日
 平成14年2月3日
 平成13年2月15日
 平成12年2月11日
 平成11年1月25日
 平成10年2月7日
 平成9年2月5日
 平成8年2月11日
 平成7年2月13日
 平成6年2月7日