2008年のスギ・ヒノキ科花粉飛散のまとめ
---ヒノキ科花粉数予測の難しさ---


[報告:花粉情報委員長 沖中 芳彦]



 昨年は記録的な暖冬でスギ飛散期に雨もほとんど降らなかったためか、予測を上回る数のスギ花粉が捕集されました。本年も2月の平均気温は高めに推移するとの長期予報でしたが、現実には平年以下の平均気温となりました。そのため本年は2月2日に宇部市の一測定点で一度スギ花粉飛散の定義に該当しましたが、その後飛散が連続せず、県内全域での飛散開始は2月19日でした。
 昨年秋の着花状態から、山口県内の花粉測定機関の平均値として、スギは2,000個/cm2以上の総数となると予測しましたが、実際は1,750個にとどまりました。 平年値(1,900個)をわずかに下回る総数で、 予測の87.5%以下の値でしたが、今シーズンの雨の多さを考慮すると、そこそこの結果と考えております。
 一方、ヒノキ科花粉につきましては多くの課題を残す結果となりました。昨年秋の花芽調査の結果から、平年(700個/cm2)を大きく上回ると予測しましたが、平年並みの飛散総数で終了しそうです。
 昨年シーズンのヒノキ科花粉飛散期に雄花の観察をした際には、最盛期でも雄花そのものを見つけるのに苦労した覚えがあります。漸く見つけた雄花が図1です。この年のヒノキ科花粉総数は、約350個/cm2(平年の半分)でした。このシーズンは前年秋のスギの雄花観察時に、ヒノキの花芽を見つけることはできませんでした。
 ところが今シーズンは、秋にスギ雄花の観察を行う際に、探そうともしないのにヒノキの花芽が眼に飛び込んできました。数多くの花芽を着けたヒノキの木(図2)が多数確認され、前年度の飛散期の雄花の数と比較すると、花芽の段階で既に5倍以上の着花があると思われました。もともとこの時期にはヒノキの花芽は目立たず、よく観察すると確認できますが、とても飛散数の予測に有用な情報が得られるものではなく、そのつもりで観察することさえ試みておりませんでした。この時期にこれほど多くの花芽を確認したのはこれまでにない経験でした。「今シーズンのヒノキ科花粉の飛散は非常に多くなる」と思うに至った所以です。
 年明けに耳鼻咽喉科の有志で花芽の観察結果の情報交換を行いました。そのときに得られた結論は、今シーズンはヒノキの花芽は多く、かつ成長が早そうだ、ということでした。しかし、これも2月の気温が低かったことが影響したものと思われますが、ヒノキ科花粉飛散のピークはむしろ例年よりも遅くなりました。
 本年のヒノキ科シーズンのピークを少し過ぎた時期に雄花の観察を行ったところ、やはり多くの成熟した雄花(赤く見えるもの)が確認されました(図3)。昨年の状態(図1)と比較すると、その多さは歴然としています。しかしながら、この時期においても、いまだに花芽のままのような未成熟の花(白く見えるもの)が高率に認められました(図4)。しかし、成熟した雄花だけをとってみても昨年の数よりはかなり多いと思われるのですが、花の多さと花粉飛散数の少なさのギャップの原因がわからず、困惑しているところです。
 一つ明らかになったことは、ヒノキは花芽がすべて成熟するわけではないということです。したがって、ヒノキに関しては花芽調査から花粉飛散総数を予測することは困難のようです。今年の花粉数に影響を及ぼしたと考えられる昨年の7月は平均気温が低めで降水量も多かったのですが、8月以降は一転して記録的な猛暑の日々となりました。今シーズンに関しては、この猛暑の影響で、十分に成熟することのできない花芽までも多く着いたのかもしれません。
 環境省の予測では、本年の山口県のスギ・ヒノキ科合計花粉総数は、当初、前年の50%程度とされておりましたが、最終的に(本年1月24日付)72%に上方修正されました。実測値は、昨年の約2,800個に対し本年は約2,450個(87.5%)で、環境省の予測よりはやや多い値でしたが、われわれの予測(3,400個以上で、前年の120%以上に相当)よりはかなり少なくなりました。今シーズンに初めて試みたヒノキ科の予測ですが、早速暗礁に乗り上げ大破した格好となりました。復旧の目処が立ちません。

図1
図2
図3
図4


●過去のスギ花粉飛散開始日
 平成19年2月3日
 平成18年2月1日
 平成17年1月15日
 平成16年2月16日
 平成15年2月6日
 平成14年2月3日
 平成13年2月15日
 平成12年2月11日
 平成11年1月25日
 平成10年2月7日
 平成9年2月5日
 平成8年2月11日
 平成7年2月13日
 平成6年2月7日