山口県における2009年のスギ・ヒノキ科花粉飛散のまとめ

県医師会花粉情報委員  沖中 芳彦


 前年秋の観察定点における雄花の着き具合から、2009年のスギ花粉総数を、県内測定施設の平均値として、過去(1992年以降)の平均値1,940個/cm2や2001年以降の平均値2,350個/cm2を大きく上回る3,400個/cm2程度と予測しました。結果は3,600個/cm2で、ほぼ予測通りの平均総数となりましたが、内心は3,500個を超えないであろうと思っておりましたので、予想以上に飛散したという感があります。
 一方ヒノキですが、昨シーズンには花芽の多さの割には少ない飛散数となり、花芽観察からのヒノキ科花粉総数予測の難しさを痛感しました。今シーズンも昨シーズン同様、前年秋の時点ではヒノキの花芽はたくさん着いておりました。これらの花芽がどれくらい成熟するかが問題でしたが、本年はほとんどの花芽が成熟したようで、結果、過去(1995年以降)の平均値690個/cm2はもちろんのこと、2001年以降の平均値890個/cm2をも上回る1,160個/cm2(4月20日現在)の飛散総数となりました。しかし、これでもこれまでの最高値である2005年の2,040個よりはかなり少なく、また本年のスギ花粉総数の3分の1以下の値でした。ヒノキ科花粉数は必ずしもスギ総数と比例するわけではないようで、数の予測はまだまだ困難な状況です。
 本年はこれまで以上に頻回にスギやヒノキの木の観察を行い、雄花の状態や花粉の残存の程度を確認して日々の予測に役立てる努力をしました。スギは2月4日が飛散開始日となり、暖冬の影響でその後急速に花粉数が増えました。しかし2月中旬頃から気温が下がり、まとまった降水もあったことから、しばらく飛散が抑制された状態が続きました。図1は、累積飛散数約1,300個の時点である2月22日の北部地区、標高約200メートル地点のスギの枝です。一帯のスギの雄花はまだ開花しておらず、花粉を全部蓄えたままの状態でした。予測総数の3分の1強が飛散した段階ではありましたが、雄花の状態からもまだ最盛期を迎えていないことが推測できました。図2は同じ地点の、3月20日のヒノキです。ほとんどの花芽が順調に成熟していることが確認されました。既にヒノキ科花粉飛散数も増えていましたが、花粉を蓄えた雄花が多く、やはり最盛期がこれからであることが予測できました。
 日々の花粉飛散は天候にも大きく影響を受けます。県医師会事務局に翌日の天気や気温の予報を数か所のサイトで調べていただき、前日までの飛散状況と照らし合わせながら翌日の予測をしていますが、文面から受ける予報の印象と実際の天候が大きく異なることがしばしばあります。花粉飛散の予測には気象予報に関する知識も必要のようです。
 スギ、ヒノキ科花粉飛散期に、山口県ではカバノキ科ハンノキ属花粉も捕集されます。ご存知のように、カバノキ科花粉症の方はしばしば口腔アレルギー症候群(果物アレルギー)を合併します。特に阪神地区では大量に植樹されたハンノキ属のオオバヤシャブシの花粉症が問題となっております。オオバヤシャブシは成長が早いことから、緑化や砂防の目的で近年たくさん植樹される傾向にあるようで、山口県内でも多数の樹が確認できます。特に高速道路をはじめとして比較的新しい道路沿いには結構な数の樹がみられます。図3はそのオオバヤシャブシで、3月20日に宇部市内で撮影したものです。図4はその花序の拡大写真です。山口県でも数年後にこれらによる花粉症が問題になるのではないかと危惧しております。

図1
図2
図3
図4