2009年スギ花粉飛散予測


山口県における2009年のスギ花粉飛散総数の予測

県医師会花粉情報委員  沖中 芳彦

  本年もスギ・ヒノキ科花粉飛散のシーズンが近づいてきました。一昨年度は平年をやや下回る予測に対し実測は平年以上、昨年度は平年並みかやや上回る予測に対し実測はやや下回る結果で、2年続けてハズレの印象ですが、性懲りもなく2009年シーズンの予測をさせていただきます。
 一般に、スギ雄花の分化は夏の気温が高く、日照時間が長く、降水量が少ないほど促進されると考えられております。山口県医師会花粉情報システムの花粉測定機関としてご参加いただいている寺田 勉先生(現於福中学校長)によりますと、山口県の2008年の7月の日最高気温、 日平均気温の積算値は、当県で過去最多のスギ花粉飛散数を記録した1995年シーズンの前年7月に次ぐ高値であったそうです。これに対し、8月は全国各地で「ゲリラ豪雨」なる言葉が聞かれるほど降水量が多く、9月上旬としては珍しく小野湖も満々と水を蓄えておりました。このような夏の気象が今シーズンのスギ雄花の形成にどのような影響を与えたのでしょうか。
 そのようなことを考えながらスギの木を観察してみますと、2008年11月の時点で、雄花を着けている枝の割合(筆者はこれを便宜上「着花率」と称しております)の多い木が多数確認されます。図1は,シーズン中のスギ花粉総数と前年秋のスギ雄花芽の着花率との関係を示したものです。棒グラフは左軸で、県内26測定機関のスギ総数平均値と宇部市の花粉数、折れ線グラフは右軸で、スギの木の平均着花率です。筆者が従来から用いている平均着花率と花粉総数の回帰式によりますと、県内測定施設の平均値として、3,400個/cm2というスギ花粉総数の値が導き出されます。これは、平年値1,940個/cm2を大きく上回る値となります。しかしながら、着花率が高い割には各枝先の雄花の数がやや少ないような印象を受けます。図2は今回観察したもの、図3は3,750個の総数であった2005年の前年秋のもので、同一の木を、いずれも11月の同じ時期に撮影したものです。両者を比較しましても、同程度か2004年秋(図3)の方が花の着きが良いように思われます。また、図4は3,800個を超えた2001年のシーズンのものですが、このように枝先から中枢側向かって長く花を着けている枝も今シーズンは少ないように思います。さらに、これまで大量に飛散した1995年(5,000個以上)、2001年、2005年の前年の花粉数はいずれも500個以下と非常に少なく、スギの木にとりましても体力が温存できていたのではないかと思われます。これに対し昨シーズン(2008年)は平年値に近い値の花粉が飛散しており、過去の大量飛散年ほどの体力を有してはいないかもしれません。したがいまして、夏の気象や花芽観察の結果等から総合的に判断して、今シーズンは平年を大きく上回る飛散になる可能性が高いと思われますが、総数としては2001年や2005年の数に届くかどうかといったところではないでしょうか。
 ただし、実際の飛散はシーズン中の天候にも大きく影響されます。一昨年のように降水がほとんどなければ花粉が長時間空中を舞い、逆に雨や雪の日が多いと放出された花粉は早めに壊れてしまいます。今シーズンも飛散期に気温が高めで降水機会が少なければ予測以上の飛散となる可能性もあります。逆に雨や雪が多ければ予測より少なくなると思われますが、決して「少ない」飛散にはなりませんので、十分な花粉症対策が必要です。
 一方ヒノキですが、昨シーズンには花芽の多さの割には少ない飛散数となり、花芽観察からのヒノキ科花粉総数予測の難しさを痛感しました。今シーズンも昨シーズン同様、ヒノキの花芽はたくさん着いております。しかしヒノキの花粉が形成されるのは飛散期直前の3月ころからだそうです。ここ2年間のヒノキ科花粉飛散は平年以下、平年並みと推移しておりますので、体力は多少なりとも温存されているかもしれません。
 スギやヒノキに感作されている方(特異的抗体が陽性)でも全員が花粉症を発症しておられるわけではありません。しかしながら大量飛散年の花粉数の多い時期に、そのような方が初めて花粉症を発症することが多いようです。その意味では今シーズンはこれまで症状のなかった方も注意が必要です。抗体陽性者はもちろんのこと、検査を受けたことのない方もできるだけ花粉を避けるような対策が必要でしょう。
 山口県医師会は、第2回目の県民公開講座、花粉症対策セミナー「これでバッチリ花粉症対策2009」を平成21年1月18日(日)に開催致します。特別講演講師として国立病院機構福岡病院アレルギー科の岸川禮子先生をお招きし、「スギ花粉症と下気道症状について」と題する講演を行っていただきます。多くの方々のご来場をお待ちしております。

図1
図2
図3
図4



●過去のスギ花粉飛散開始日
 平成19年2月3日
 平成18年2月1日
 平成17年1月15日
 平成16年2月16日
 平成15年2月6日
 平成14年2月3日
 平成13年2月15日
 平成12年2月11日
 平成11年1月25日
 平成10年2月7日
 平成9年2月5日
 平成8年2月11日
 平成7年2月13日
 平成6年2月7日