2010年スギ花粉飛散予測


山口県における2010年のスギ花粉飛散総数の予測

県医師会花粉情報委員  沖中 芳彦

 本年度もスギ・ヒノキ科花粉飛散のシーズンが近づいてきました。2年続けて予想が外れたあと、昨年度は県内測定機関の平均値としてスギ3,400個/cm2の予測に対し実測値は3,600個と予測に近い飛散数となり、ほっと一息ついたところですが、2010年シーズンの予測は難しくなりそうです。
 2009年の夏は梅雨がなかなか明けず、記録的な豪雨により、特に防府市においては多数の方々がお亡くなりになるなどの大災害が発生したことは、記憶に新しいところです。宇部市における7月の日照時間は平年の50%以下であったとも聞いております。一般に、スギ雄花への分化は夏の気温が高く、日照時間が長く、降水量が少ないほど促進されると考えられておりますので、この夏の気象はスギの雄花芽形成には不利な条件となりました。また、年ごとのスギ花粉飛散総数は前年よりも多い、少ないを交互に繰り返しており、今シーズンは前年よりも少ない年に相当します。
 2009年11月の時点では、雄花を着けている枝の割合(筆者はこれを便宜上「着花率」と称しております)は木により大きな差があります。図1は雄花がほとんど着いていないもの、図2は比較的多くの雄花を着けているもの、図3はその中間程度のものですが、本年度は図1のような、雄花の少ない木が多いようです。図4は、シーズン中のスギ花粉総数と前年秋のスギ雄花の着花率との関係を示したものです。棒グラフは左軸で、県内全測定機関のスギ総数平均値と宇部市の花粉数、折れ線グラフは右軸で、数か所のスギの木の着花率です。筆者が従来から用いている平均着花率と花粉総数の回帰式によりますと、県内測定施設の平均値として、約900個/cm2というスギ花粉総数の予測値が導き出されます。これは、平年値(最近10年間の平均)2,200個/cm2の半分以下の値となります。夏の気象や2009年が大量飛散の年であったことなどが影響して、2010年のシーズンのスギ花粉は少な目の飛散となりそうですが、すべての木で着花率が低いわけではありませんので、極端に少ない飛散数とはならないと思われます。
 実際の飛散はシーズン中の天候にも大きく影響されます。降水がほとんどなければ花粉が長時間空中を舞い、逆に雨や雪の日が多いと放出された花粉は早めに壊れてしまい、遠くまで飛散する花粉の数は減少します。
 一方ヒノキも、平年の1.5倍程度であった2009年や平年並みであった2008年のシーズンの時と比べ、今シーズンの花芽は少ないように思われます(図5)。ヒノキ科花粉総数の予測は難しいのですが、スギ総数の半分程度かそれ以下の年が多いようです。
 本年度は新型インフルエンザが猛威を振るっています。季節性インフルエンザも流行るのでしょうか。新型インフルエンザでは、発熱や全身症状が治まった後も咳だけが持続する例が少なからず存在するようです。今シーズンのスギ・ヒノキ科花粉飛散は平年よりも少なくなりそうですが、ウイルス感染で亢進した気道の過敏性が、花粉暴露時の症状の程度に影響するのでしょうか。気になるところです。

     平成22年1月号山口県医師会報にも掲載

図1
図2
図3
図4
図5



●過去のスギ花粉飛散開始日
 平成21年2月4日
 平成20年2月2日
 平成19年2月3日
 平成18年2月1日
 平成17年1月15日
 平成16年2月16日
 平成15年2月6日
 平成14年2月3日
 平成13年2月15日
 平成12年2月11日
 平成11年1月25日
 平成10年2月7日
 平成9年2月5日
 平成8年2月11日
 平成7年2月13日
 平成6年2月7日