かかりつけ医通信 その4 認知症とともに生きる

ロンドンオリンピックも終わりました。数えきれないほどの感動、涙、笑顔ありましたね。みなさんどうですか。一種目でもメダルを取った競技を思い出すことができますか。出来るかたは認知症は大丈夫です。オリンピックはあったけどメダルは興味ないなあってかたは要注意。是非一度お医者さんで相談してください。

認知症は高齢化社会とともに多くなり、認知症という言葉を知らない人はほとんどおられないのではないでしょうか。認知症は60から65歳の高齢者の12人に1人、80歳以上では4人に1人と言われています。最近の調査では高齢者の方で最もなりたくない病気ナンバーワンだそうです。でも認知症のくわしい事って分かりませんよね。今回は認知症についてお話しましょう。

認知症は基本的にはもの忘れがある、場所や時間などが分からなくなる、計算や仕事の段取りができなくなって一人では普通の生活ができなくなることです。しかし普通のおしゃべりは上手にできるので意外と早期に病気に気づくのは難しいんですよ。

認知症を完全に治す薬はまだありませんが、病状を安定させたり、進行を遅らせる新しいお薬はいくつか出来ました。最初の薬は日本人が開発しました。その研究者自身のおじいさんが認知症で、なんとか治してあげたいと、大変難しい研究だったそうですが、一生懸命頑張ってできた薬だそうです。早期から服用すると結構効果があります。やる気が出て、今まで出来なかったことができるようになったり、見えないものが見えたりする不思議な症状(幻視)が改善したりします。残念ながらすべての患者さんがすぐによくなるような夢の薬ではありませんが、薬の種類が増え使い方も変わってきてより多くの患者さんの役にたつようになりました。

認知症の治療で最も大切なことの一つは早く治療を開始することです。早期に治療を開始して進行を遅らせることが大切です。さきほども書きましたが認知症が始まっても初期は症状がほとんどないため早期に発見されないことも多いようです。やはり誰でもなりうる病気ですから、日頃からちょっと注意することが大切です。おじちゃん、おばあちゃんと一緒にいて、あれいつもと違うなって気づくことが大切です。好きだったことを辞めたり、くすりの数が合わなくなったり、車をたびたび傷つけるようになったりです。どうかなって思ったら遠慮なくかかりつけ医の先生にご相談してください。それから認知症を疑ったら一度は脳の詳しい検査を受けて下さい。脳梗塞など、治る可能性のある、また予防できる認知症がみつかることがあります。

残念ながら認知症がある程度進行してしまった時は、少し気分を落ち着かせるお薬や、専門的な介護で病状が安定するようにします。精神的な症状がとても強いときは一次的に入院治療していただいたり、介護保険施設などの利用もよいともいます。認知症のかたは上手に表現することは出来ませんが、こころのなかは私たちとかわりません。少し難しいですが認知症の方々の隠れた気持ちがわかるようになれるとすばらしいですね。また最近では認知症のかたが迷子になったり、買い物に困ったりしたときでも安心して生活していけるような街づくりが進められています。

認知症の予防できたらいいですよね。今のところ考えられていることは、運動をすること、野菜やお魚などをしっかりとること、社会参加をすること、生活習慣病の治療をすること、本を読んだり、趣味をもって頭を使うことなどが言われています。私は仕事を続けることも大切だと思っています。まだ認知症を完全に治す治療法はありませんが、医学の進歩は目覚ましくいつかは治療できる日が来ると思います。それまでは認知症を予防し、早期発見・早期治療をして認知症になっても安心して暮らせる光市を作っていきましょう。

  

               光市医師会副会長・光中央病院院長

                       丸岩 昌文