平成22年6月度光市医師会月例会

 日時:平成22年6月22日(火)19:00〜
 場所:光商工会館2階 大会議室

【講演会】19:20〜20:20
  「糖尿病診療を楽しむ
          〜インクレチンとともに〜」
    社会保険下関厚生病院 糖尿病・内分泌内科
           部長 野田 薫 先生

  日本での糖尿病患者は増加の一途をたどり、厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、糖尿病が強く疑われる人は、平成19年(2007年)の調査で890 万人、糖尿病の可能性を否定できない人は1,320万人になり、糖尿病患者と予備軍を合わせて、2,210万人にのぼります。野田薫先生は下関厚生病院で約1000名の糖尿病患者を外来管理されている糖尿病専門医です。実際の外来患者データを元に、そのデータを提示しながら、糖尿病治療の最近の知見や望ましい治療について話していただきました。

  今年の7月以降の診断基準は上記のようになりました。正常とは空腹時血糖が110mg/dl以下、かつ糖負荷試験2時間値140mg/dlです。治療としてはこれまでの脳卒中や心筋梗塞イベントなどのような生命予後に関連した治療目標だけでなく、下肢の切断や失明などのような社会的損失にも目を向ける必要があります。

  DPP4阻害薬が糖尿病治療において最近、話題に上っています。その臨床的な位置と、具体的な使い方について説明をしていただきました。SU剤とDPP4阻害薬の併用は相乗効果によりより強力な血糖降下作用があり、その併用には低血糖発作に十分注意して欲しいとの注意がありました。

  最近話題の頂点は、ビクトーザ−−VictozaR(ビクトーザR/一般名:リラグルチド)は、米国および欧州での販売名です。世界初の1日 1回投与のヒトGLP-1ア ナログ製剤です。米国で承認された適応症は、成人2型糖尿病における食事及び運動療法の補助です。これにより、ビクトーザRは、単 剤療法の第二選択薬として、および汎用されている経口糖尿病薬との併用で使用されます。GLP-1受容体に作動してインクレチンの分泌を促進するものです。図にあるようにDPP-4阻害薬に比べればその効果は数倍するもので、SU剤との併用により非常に強力な糖尿病治療が実現します。日本では、2010年1月20日に承認を受けました。

  最後に外来治療のちょっとしたこつについて。どうしても外来治療で食事や運動療法に抵抗される患者さんに、北風治療でなく太陽治療で望みましょうとの提言がありました。「水を飲んでも太るんです」と言う患者さんに、「そんなことはないだろう」と反論するよりも、「そうかもしれないね、体質によるんです」とやさしくいなす態度が大切だと諭されました。たいへん懇切丁寧なお話ぶりで、分かりやすい説明には感服いたしました。