光市医師会学術講演会
「小児喘息の治療について
ーガイドライン2002を中心に」
社会保険徳山中央病院小児科
内田正志
はじめに,徳山中央病院小児科に赴任して以来取り組んできた小児救急の広域化と現在取り組んでいる麻疹制圧運動について話しました.周南地域の小児救急は夜間(19:00-22:00)と日曜・祭日(9:00-17:00)は一次が周南市の休日夜間急病診療所,二次が徳山中央病院とシステム化され,順調に運営されています.下松市や光市の子供の受診も年々増加しています.「地域の小児科医全員で小児の一次救急を担おう」を合い言葉に,下松医師会,光市医師会所属の小児科医にも出務してもらっています.
日本は麻疹輸出国という不名誉な称号をもらっています.麻疹制圧の基本は予防接種率を95%以上にして,感受性者を減らすことです.山口県小児科医会では平成16年度までに1歳6ヶ月児の麻疹ワクチン接種率を95%以上にすべく,病院・医院で1)1歳の誕生日のプレゼントに麻疹ワクチンを接種しましょう,2)麻疹ワクチン未接種者のチェック,接種の勧奨と確認をしましょうの2つを柱に活動しています.皆さんのご理解とご協力をお願いします.
気管支喘息については慢性の気道炎症であるという考えが定着してきました.小児科領域においても同様です.したがって,治療は発作時のみではなく,非発作時の治療,つまり気道の炎症を抑えることに主眼がおかれるようになりました.
小児科領域では以前からゼロレベル作戦(つまり,発作によって低下した肺機能や亢進した気道過敏性を元の状態に戻す)という考えがあり,発作後もしばらく治療を継続するというものです.気道の慢性炎症という考えはゼロレベル作戦に理論的根拠を与えたと思います.気道炎症を抑える治療の中心はステロイドの吸入と抗アレルギー剤の内服です.日本ではテオフィリン徐方剤もよく使われますが,血中濃度は以前ほど高くなく,5-15μg/mlで十分と考えられるようになりました.つまり,何か1つの薬でコントロールするのではなく,効果のある薬をいくつか組み合わせて,発作をまず抑え,薬を減らしていくという考え方が主流になっています.最近ではコントロールできないから薬を徐々に追加していくというステップアップ方式より,最初にステロイド吸入などで発作をきちんと治めて薬を減量していくステップダウン方式が採用されることが多くなり,それは早期介入へと変化してきています.
喘息発作をコントロールしていくうえで喘息日誌の記入とピークフローメーターの使用は重要です.客観的に発作の評価ができ,患者との信頼関係の構築に役立ち,薬の増量や減量がスムーズにできます.主治医がきちんとした姿勢を示せば,患者さんは面倒くさがらずに記入してくれますし,ピークフローメーターも使用してくれます.なによりもそうすることによって発作がうまくコントロールされるようになります.
ガイドライン2002は年齢を2歳未満,幼児,年長児の3つに分け,発作を間欠型,軽症持続型,中等症持続型,重症持続型の4つに分け,それそれの治療について述べています.ステロイドの吸入が軽症持続型から考慮され,重症持続型では抗アレルギー剤の中で抗ロイコトリエン剤のみが考慮されているのが特徴です.