市民公開パネルの司会をして思うこと
光市医師会長 前田昇一
木曜の午後7時開会と云った、ご家庭では忙しい時間帯にもかかわらず、多くの参加者で会場が一杯となったことにまづ驚きました。記名された144名中3分の2は女性で、この問題に関する女性の方の関心の高さを改めて認識しました。
日本のターミナルケアの歴史は、30年ばかりで未だ浅く、施設や人材育成も不十分で試行錯誤のところが多いと聞いています。光市医師会が参加したこの問題に関する公開パネルは初めてではないかと思います。パネルの冒頭でも申し上げましたように、聖路加病院の日野原重明先生は、著書の中で死は「生の最後のパフォーマンス」である。各人各様で一律のものではない。最高の死は死にゆく本人の力だけでは演じられない。家族あり、友人あり、医療従事者などの深い理解とバックアップが必要で、それらが一つになった時“癒された死”が迎えられると述べておられます。癒された死とは、自分の人生を満たされたものとして眺め、身体の崩壊を安らかに受け入れることの出来る理想の死と云えましょう。心より「ありがとう」と云える死を迎えたいと誰もが願うところです。
公開パネルではやはり前川さんの体験からの話は、説得力があり、患者さん中心の医療の実現が望まれていると再認識させられました。在宅医療やケアは後方支援病院(緩和ケア病棟)の存在と共通した理念の下で連携があって初めて充実し、患者さんやご家庭の方々も安心感を抱くことが出来るようになりましょう。国の低医療費政策に中にあって、自治体病院ですら財政的にも人材的にもいろいろ困難な問題が多いようです。先は長いと思いますが、地域の文化のレベルアップにもつながる緩和ケア病棟の実現に努力したいものです。会員の皆様のご健勝をお祈りします。