市民公開パネル『山口県東部地区における年間癌死者数』
                        光市立病院 山本憲男

 1980年頃より癌による死亡が脳血管障害を抜いて以来,最近のわが国における癌死者数は30万人を超えており、これは山口県の人口の20%が1年間で癌で亡くなり,5年間で山口県の全人口くらいが癌でお亡くなりになるという事であります。山口県でも全国平均と同じように昭和56年頃より癌が死因の第1位となりその後徐々に増え、平成11年で人口10万人あたり280人となり、全国平均の235人より高くなっている。山口県では癌,心臓病,脳血管障害の3大死因を併せると約60%となる。(1)
 山口県地域癌登録センター(2)にて集計された山口県東部の6市4郡(岩国,柳井,光,下松、徳山,新南陽、大島玖珂,熊毛,都濃)の平成11〜13年の3年間の集計を報告する。
 県東部での年間癌死者数は平均で約1500人であり、他因死(最後が癌以外の病気で死亡)の割合は約80人(平均6.3%)であった。死亡場所別分類では85%が病院で死亡しており、診療所4%,自宅での死亡7%,その他4%となっていた。
 死因の癌腫別分類では肺癌が284人と一番多く、次いで胃癌226人、大腸癌170人、乳癌47人,子宮癌27人となっていた。
 癌死亡者数の病院別分類では3年間で徳山中央病院850人、国立岩国病院507人周東病院452人、岩国医師会病院211人,光市立病院202人、岩国南病院134人、徳山医師会病院130人、新南陽病院115人、町立大和病院111人、周南記念病院108人となっていた。
 各郡市地域への癌患者さんのとどまり率を(その地域病院での病死者数÷地域人口)を計算しグラフ化した。人口比で最も痴愚者の地域へのとどまり率が高いのは柳井地区で1.5を超えている。次いで徳山岩国がほぼ同格で1.0であった。光市,下松,新南陽では0.5と相対的に低くなっていた。

 まとめ
 これからの高齢化社会を迎えるに際して、癌患者は益々増加する傾向にあり、2015年には人口10万人あたりの癌罹患死者数で現在の約3倍の90万人を超えると推定されている。日本における2002年現在での緩和医療施設は108施設(2042床)と少なく、緩和ケアー癖棟で最後を迎えられる癌死カバー率はわずか3%である。それに対してシンガポールでの癌死カバー率は60%、香港40%、台湾20%と近隣のアジア諸国に比べても日本よりはるかに高いとなっている(3)
 山口県東部地区だけでも年間1500名を超える癌死者数があり、そのなかから県西部の病院へ移動している患者の3割は緩和ケアー病棟のある山口日赤,山陽荘病院であった。県東部への緩和ケアーの設置が早急に求められる。