学術講演会
日時:平成14年9月24日19:00〜
場所:勤労者総合福祉センター
座長:光市立病院
診療部長 山本憲男先生
「虚血性心疾患の薬物治療」
講師 都志見病院循環器内科部長
松田泰雄先生
松田先生は、昭和45年に卒業と同時に米国医師免許も取得され、48年より6年間クリーブランドクリニックで循環器内科の臨床および研究に従事され、帰国後平成4年まで山口大学で長期間にわたり臨床、研究、教育に従事されていました。本日はわかり易く虚血性心疾患の薬物治療を話された。
昔から用いられている虚血性心疾患に対する代表的薬剤としては
@ ニトロ剤
A Ca拮抗剤
B β-ブロッカー
等であるが、これらの薬剤はあくまで症状の改善を目的とした薬であり、予後の改善には必ずしも結びつかない。
それに対して
@ アスピリン(抗血小板、抗炎症作用
A スタチン系薬剤(コレステロール低下、抗炎症作用
B ACE阻害剤
などの薬剤は予後改善作用が期待出来る。
血管内の血栓の形成過程にはLDLコレステロールが上昇する事により、プラーク形成が生じる。このプラークの形成過程にはマクロファージが関与しており、血管内の局所炎症の進行にともない、むしろ階段状に増悪して血栓が成長形成されてゆくものと思われる。
@〜Bのいずれの薬剤も有症状の狭心症例に対して30%以上の症状の改善作用があり、またβブロッカーを併用する事により75%の症状をコントロールできるので、症状の強さにあわせて薬剤の選択など内科的治療が非常に大切となってくる。
具体的処方例としては
@ バイアスピリンは75〜150mgが一般的であろうが、抗凝固作用以外に抗炎症作用も期待するのであればある程度高容量が良いだろう。また抗凝固作用が不十分な場合はパナルジンなど他の抗凝固剤の併用が望ましい。
A プラバスタチン(メバロチン)はコレステロール降下作用に加えて抗炎症作用も重要である。心筋梗塞の半数はコレステロール値が正常であることより、プラークでの炎症の活性化が症状発現に重要であるとすれば、コレステローツ値が正常値の人でも用いて良いことになる。
例えば、シンバスタチン(リポバス)はコレステロール値が130以下の有症状の狭心症例に用いて、総死亡率を13%低下させたとの報告もある。
B 血管系疾患もしくは糖尿病、及びその他の心血管危険因子を有する高リスク患者に対してACE阻害薬(ラミプリル)投与により5年間の死亡率、心筋梗塞、脳卒中を著名に減少させたと報告されている。
C 昔から用いられているニトロ剤は狭心症発作に対しては有用であるが、長期連用すると、ニトロ剤に対して耐性を作るので気をつけなければいけない。
ニコランジル(シグマート)は細胞内のKチャンネルに作用して、心筋の虚血が生じた時に壊死範囲を少なくするpreischemic conditioning 作用があるので降圧剤としてのみならず、狭心症治療薬として有用である。
以上、狭心症の病態と治療方針のキーポイントを最新の外国の情報を混ぜて判り易く講演していただきました。
文責 山本憲男)