テーマ「コロナ感染の疑いがあれば速やかに医療機関を受診しましょう」


日 時:令和3年9月16日(木)14:30~15:30
場 所:山口県総合保健会館 2階「第一研修室」

《 河村県医師会長 》
 新型コロナウイルス感染症が始まって1年半が経過したが、まだまだ収束していない。現在、ステージ2から3のところであるが、市中感染や、ピークアウト後も収束しないのは、感染力の高いデルタ株の特徴が影響しているのではないかと思われる。政府分科会の尾身会長も、もう2、3年は付き合わなければならないと言われている。
 さまざまな医療関係者の協力により、山口県はワクチンの接種率が高いが、12歳未満の小児は薬もなく、ワクチンもない。どのように守っていくかが大切。

《 松永山口大学医学部附属病院副病院長 》
 新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐことは3つの観点から重要。1.重症化による生命の危険がある。2. 重症者は軽症者より2倍以上、後遺症の発症率が高い。3.軽症や中等症Ⅰの方に抗体カクテル療法が使えるようになったが、受診遅れや症状の進行が進んでいる状況では、適応とならない。 
本日は症状発現から診断までの期間が重症化にどのような影響を及ぼしているのか、ワクチンの接種状況との関連性、の2つのテーマで山口県内の状況をお話しする。
 熱やのどの痛み、咳などの自覚症状があり、県内で新型コロナ感染症と診断された751名の方のデータをみると、診断時点での重症度が進むにしたがって、自覚症状発現から診断までの日数がより多くかかっている。自覚症状発現日を1日目とすると、軽症者は平均2.6日だが、重症者は平均7日。1つ目のメッセージは「発熱や風邪症状などのコロナ感染を疑うサインがあれば、速やかに医療機関で検査を受けましょう(72時間以内)」。発症発現から診断までの日数と重症化のリスクを比較すると、3日以内に早期診断された方と4日以上過ぎて診断された方では、人工呼吸器や酸素吸入などが必要となった割合は3倍程度違っている。年代別で比較すると、41歳~60歳と61歳以上の2つの集団では、他の年代と比べて呼吸管理が必要な割合が高く、重症化しやすい。また、症状の発現から診断までの日数が他の集団と比べると長い傾向にある。2つ目のメッセージは、「特に、40歳以上の方々の受診の遅れはコロナ感染症の重症化に影響している可能性があります」。

 抗体カクテル療法の適応基準は3つある。1.肥満、心血管疾患、慢性肺疾患、糖尿病、慢性腎障害、慢性肝疾患、免疫抑制状態などの重症化リスク因子を少なくとも1つ有していること。2.酸素投与を必要としないこと。3.投与日が発症日から7日以内。つまり、発症日から7日以内でなければ抗体カクテル療法の対象とならないことを知っていただきたい。なお、抗体カクテル療法の有効率に関する県内のデータはまだ出ていないが、傾向としては軽症患者の重症化を防いでいるという手応えを感じている。

 40歳以上の方を対象に、ワクチン接種完了の方と未完了の方を比較すると、呼吸管理が必要な方の割合は2倍程度違い、接種完了の方のほうが、重症化リスクが低い。


 最後に、新型コロナ感染症の予防策や治療法は進歩しているが、基本的な感染予防が依然として重要であることには変わりがないので、引き続き実行していただきたい。

《 主な質疑 》
〇 家庭内感染・子どもの感染予防について

《河村会長》
 子どもの感染予防は、まずは家庭内の大人のワクチン接種が第一と考える。
《松永副病院長》
 大人のワクチン接種とあわせて、自覚症状が出れば、できるだけ早く受診・検査をすることが重要。
《加藤副会長》
 デルタ株の感染力はこれまでとは全く違い、子どもの入院患者が増えている。子どもにとってはデルタ株が第一波という小児科医もいる。子どもに対する治療薬はない。大人からうつることを防ぐこと、換気を行うことしか対策はない。

 

〇 受診を躊躇う原因について

《松永副病院長》
 仕事が忙しいなどに加え、感染が確認されることの恐れ・不安が大きな原因かもしれない。これを克服するには、コロナと正しく向き合う、正しく恐れ、適度に危機感を持つことが必要。そのためには正しい情報や身近な情報を知ることが重要。

 

〇 季節性インフルエンザとコロナの判断について

《松永副病院長》
 臨床症状だけでは鑑別は不可能。多くの医療機関で迅速に診断できる体制となっているので、できるだけ早く受診していただきたい。

 

〇 県の集中対策に対する評価・要望ついて

《松永副病院長》
 県内では8月に10件程度の飲食関連クラスターが発生したことにより、時短要請となったと考える。時短の実施によって飲食関係のクラスターは激減しており、効果は確実にあったと思う。
《河村会長》
 医師会は県にワイルドバンチフェスの中止要請をするよう要望を行い、県から主催者に要請が行われた。主催者は中止を英断されたが、現時点では大規模な集会の開催は難しいと考えている。イベントに対する経産省の助成金は緊急事態宣言地域に限られているとのことだが、今回のように、その他の地域でも中止をした業者が助成を受けられるようしなければいけないと思う。

 

〇 山口県のワクチン接種率が高い要因について

《河村会長》
 そもそもワクチンの供給がなければ率は上がらない。山口県は厚労省に提出する接種計画にスピーディーに対応することができたことが要因の一つ。2月には接種計画は既に出来上がっていたが、ワクチンの供給が遅れ、接種の開始時期が1か月以上ずれ込んだ。5月、6月には一時供給が止まり、それがなければ、オリンピックまでには接種が終わっていたかもしれない。
《沖中常任理事》
 6月に県内全医療機関に個別接種の実施状況を調査した。当時、和歌山県は個別接種が進んでいるため接種率が一番高いと言われていたが、和歌山市の開業医の個別接種参加率は50数パーセント程度で、それに比べて、山口県の参加は64%と高い数値であった。

 

〇 ワクチンの副反応に不安を持つ方へのメッセージについて

《松永副病院長》
 食物アレルギーやアナフィラキシーの経験がある方が不安を持たれている。厚労省のホームページによると、食物アレルギーやアレルギー体質があるという理由だけで接種を受けられないわけではない、と示されている。アレルギー疾患の方には注意が必要であるが、接種後、通常より長く(30分間)、接種会場で待機して体調観察を行っていただくことが推奨されている。

 

〇 第5波の現状をどう捉えているかについて

《河村会長》
 感染のスピードは予想外だった。現在、県内の感染状況は収束に向かってはいるものの、0になるという感じではない。
 山口県は、感染者の入院・ホテル療養を原則としており、これが維持できているので、医療提供体制は充足していると考える。
《沖中常任理事》
 病床稼働率はステージ3、それ以外の指標はステージ2で、個人的には、全体的には悪く見積もってステージ3と思っている。ここのところ新規感染者が少し増えているので、油断してはいけないと思う。
《今村副会長》
 健診を受けていないため、自分の基礎疾患を知らない人が散見される。基礎疾患を持つ方は重症化リスクが高い。コロナとの闘いはこれからも続く。健診を受けて、基礎疾患をチェックし、治療を始められることを勧める。

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