記者会見「今年流行した子どもの感染症について」

     日 時 令和7年12月25日(木)13:30~14:20
     場 所 山口県医師会6階 会議室

本会見の会長挨拶から河村常任理事の概要説明の動画をYouTubeに掲載しています。
せひご覧ください。

概要説明動画(YouTube)

会長挨拶

加藤会長 本日は年末の忙しい中、お集まりいただき感謝申し上げる。本年度3回目の定例記者会見は「今年流行した子どもの感染症」というテーマで河村常任理事に説明していただく。
 今年はインフルエンザが例年より4週間早く流行し、今も警報レベルが続いており、学年閉鎖や学級閉鎖が続いている。本日の会見を契機に小児の感染症に対する理解を一緒に深めていきたい。感染症の原因は大きく分けてウイルスと細菌の2つに分かれる。今流行しているインフルエンザはウイルスによって起こるが、百日咳や肺炎球菌などによる感染は細菌によって起こる。新型コロナウイルス感染症の時に経験したように、ワクチンで防ぐことができるものはしっかりとワクチンを接種して集団免疫を作ることが大切である。新型コロナウイルスの時は新種のウイルスであったため、免疫が全くなく世界的に大流行し、わが国でも二類感染症の位置づけから五類感染症に移行するまでに3.5年の歳月を要した。この期間中はコロナウイルスの変異が早いため、何回もワクチン接種を行ったことを覚えておられると思う。
 感染症の多くはワクチンで防ぐことが可能であり、子宮頸がんや肛門がんもワクチンがある。このワクチンは小学6年生から接種が可能で、男性にも適用がある。ワクチン接種も種類が増え、打つタイミングも重要であり、インフルエンザのワクチンも注射ではない点鼻タイプの新しいものがでている。感染症の治療に関してもウイルスと細菌では異なる。抗生物質は細菌感染には効くが、ウイルス感染には効果がなく、抗生物質をむやみに使うと耐性菌を増やすことにもなるので注意が必要である。本日は小児の感染症のことをよく知っていただき、適切な予防や治療の知見を増やしていただきたい。

概要説明

河村常任理事 主に感染症の原因は細菌とウイルスの2種類がある。細菌は細胞がなくても増えることができ、細胞壁がある。一方、ウイルスは人や動物などの細胞の中で増えるため、自分では増えることはできない。DNAやRNAという遺伝子を持っており、細胞壁はない。細菌は細胞壁を壊す薬(抗菌薬)が効くが、ウイルスには効かない。大きさは、細菌は1~5μm程度で、ウイルスは20~970nmと言われており、細菌の方が大きく、ウイルスは非常に小さいので、ウイルスは遠くに飛びやすく、広がりやすいという特徴を持っている。
 ウイルス性の感染症は、麻疹(はしか)、風疹(三日はしか)、おたふくかぜ、水ぼうそう、夏かぜ症候群(手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱(プール熱)など)、扁桃炎や咽頭炎などを起こすアデノウイルス感染症、ヒトメタニューモウイルス(5月から7月ごろ、1~2歳に多い、熱、咳、鼻水、ぜいぜいなどが出る)、突発性発疹、RSウイルス、インフルエンザウイルス、新型コロナウイルス、りんご病、ロタウイルス、ノロウイルスによる胃腸炎、一般的なかぜ(ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、通常のコロナウイルスなど)、子宮頸がん、尖圭コンジローマ、肛門がんなどを起こすヒトパピローマウイルスがある。この中で麻疹、風疹、おたふくかぜ、水ぼうそう、RSウイルス、インフルエンザウイルス、新型コロナウイルス、ロタウイルス、ヒトパピローマウイルスはワクチンがあり、水ぼうそうには治療薬がある。
 細菌性の感染症は、咽頭炎や扁桃炎を起こす溶連菌感染症(ペニシリン系、セフェム系の抗菌薬が効く)、腸炎を起こし、主に食中毒になるキャンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌、百日咳菌感染症、肺炎や気管支炎を起こすマイコプラズマ感染症、髄膜炎や喉頭蓋炎などを起こすヒブ(Hib:ヘモフィルスインフルエンザb型)、髄膜炎や中耳炎、副鼻腔炎などを起こす肺炎球菌、中耳炎や副鼻腔炎などを起こす普通のヘモフィルスインフルエンザ菌、モラキセラ・カタラーリス、がある。この中で、百日咳感染症、ヒブ、肺炎球菌はワクチンがある。

近年のインフルエンザ
 今流行しているのはA香港型(H3N2)で、2025年はその中でもサブクレードKという変異型が11月ごろから流行している。また、A型は2009に新型が出ており、2009新型(H1N1pdm)などが最近見られる。A型にはAソ連型があったが、最近は見られなくなった。B型には山形系統とビクトリア系統があったが、山形系統は2020年から検出されなくなり、現在の予防接種ではA香港型、2009新型、B型ビクトリア系統の3つの型に対応しているワクチンとなっている。
 アメリカで開発され、2024年9月から発売された「フルミスト®」は鼻の中に噴射する生ワクチンである。フルミストは、現在2歳から18歳が対象(免疫異常がある場合は禁忌)で、局所の分泌型IgAを誘導する。5歳未満児でA型に対して8割程度の発症予防効果があると言われている。ただ、これはアメリカのデータであり、日本でのデータはまだないので、今後データの蓄積を待たなければ効果は分からない。また、生ワクチンであるため、インフルエンザ様症状を来すことがある。接種後1~2週間は他人に感染することもあると言われているが、ウイルスが微量で弱毒化されているので感染を気にして登園、登校を禁止する必要はない。
 インフルエンザは自然に軽快する疾患であり、薬は必須ではないが、インフルエンザウイルスに効く薬が現在、5種類ある。
・オセルタミビル(タミフル®):5日間の内服で粉薬、錠剤、カプセルなどがある。全年齢で推奨されている。
・バロキサビルマルボキシル(ゾフルーザ®):1回の内服でよく、これまでは錠剤のみだったが、今年から粉薬も出て、小児にも使えるようになった。11歳以下の子に使うとウイルスが耐性になりやすいと言われており、特にA型のインフルエンザで耐性が作られやすいと言われているため、11歳以下の子には慎重に投与することになっている。また、5歳以下には積極的には推奨しない。
・ザナミビル(リレンザ®):5日間の吸入による投与で、12歳以上には推奨されている。1歳未満は吸入が困難なため、推奨しない。6歳から11歳は吸入可能な場合に限り推奨されている。
・ラニナミビル(イナビル®):1回の吸入でよく、懸濁液は5歳以下でも吸入可能となっている。
・ペラミビル(ラピアクタ®):1回の点滴でよいが、上記の4つの使用が困難な場合に考慮することになっている。

新型コロナウイルス感染症
 2019年中国で流行し、2020年3月から日本でも発生している。現在、半年に1回の周期で流行しており、2025年の夏に流行したのはニンバス株で咽頭痛があり、感染力は今までよりも強い。罹患歴のある人やワクチン接種歴のある人では軽症が多い。発熱期間は短く、咽頭痛がない人もいる。日本小児科学会では生後6か月から17歳までのすべての子どもにワクチン接種を推奨しており、特に基礎疾患のある子には推奨している。山口県では、全国とほぼ同様の流行状況であり、半年に1回ずつ流行し、2025年は1月、9月に流行した。今後も半年に1回流行する可能性がある。
 新型コロナウイルスに効く薬として、小児で使える薬はエンシトレルビルフマル酸(ゾコーバ®)の錠剤で、1日1回5日間の投与で12歳以上に使える。症状を24時間程度早く短縮すると言われており、副反応は少ない。

伝染性紅斑(りんご病)
 伝染性紅斑、いわゆる「りんご病」は今年かなり流行し、現在でも見られる。頬がりんごのように赤くなるのが特徴で、腕や太ももがまだら模様になることもある。熱は出ないが、かゆくなることもある。ただし、大人がかかると膝や腰が痛くなったり、微熱が出たりすることがある。妊婦がかかると流産の危険がある。パルボB19ウイルスの感染によるものであり、赤くなった時にはすでに人にうつる時期を過ぎているので園や学校を休む必要はない。

RSウイルス感染症
 RSウイルス感染症は、1歳未満の乳児がかかると、細気管支炎、肺炎などを起こしやすく重症化することが多い。症状は、発熱、咳、鼻水に始まり、徐々に咳がひどくなり、ぜいぜいいうようになる。年長児や大人もかかるが、軽くて済むケースが多い。例年冬季に流行していたが、近年は9月など夏場に流行することも多い。近年、妊娠24週から36週の妊婦さんへのワクチン接種(妊婦の体内で抗体を作って胎盤を通じて赤ちゃんに送って赤ちゃんが罹るのを予防する、軽くする)、早産児、低出生体重児や基礎疾患を持つ児に免疫(モノクローナル抗体)を注射して予防することも推奨されている。妊婦へのワクチン接種が来年4月から定期接種化されることになった。なお、2004年度に私の診療所を受診した症例では、1歳未満が多く、入院例は月齢6か月以下が多かった。

百日咳菌感染症
 百日咳菌感染症も今年流行したが、ワクチンを受けていない乳幼児がかかると激しい咳、呼吸困難、呼吸停止などを起こすことがあり、死に至る場合もある。年長児や大人もかかることがあるが、発熱はあまりなく、咳が続くのみである。夜の咳がひどくなるが、死に至ることはない。通常、マクロライド系の抗菌薬が使われるが、今年は耐性菌が多く、効かない例もあった(2025年は約8割が耐性)。生後2か月になったらすぐに5種混合ワクチン(百日咳、ジフテリア、破傷風、ポリオ、ヒブ)を受けることが大切である。
 私の診療所では2025年で約100例あり、4月~8月が多かった。10月も少しあったが、今はほとんど見られなくなった。8歳~15歳の小中学生が多かったが、29日目という乳児もいた。家族内感染であり、ワクチンを受けていないので2週間程度入院した。乳児が感染すると重症になる病気だと知っていただきたい。

マイコプラズマ感染症
 マイコプラズマ感染症は、気管支炎や肺炎を起こす。オリンピックの年に流行すると言われているが、昨年、8年ぶりに主に小中学生で流行した。今年も夏ごろから増えている。通常、効果のあるマクロライド系抗菌薬に耐性がある菌が多く、なかなか薬が効きづらくなっている。私の診療所で検索の結果、6割ぐらいが耐性であった。
 全国の発生状況をみると、2016年に流行した後、あまり流行は見られなかったが、2024年の秋から冬にかけてとても流行した。2025年は夏ごろから出てきて、2016年と同じ程度の流行が見られる。私の診療所では、2024年に約240例あり、年齢をみると、5歳~9歳、10歳~14歳の小中学生で多かった。

溶連菌性咽頭炎
 溶連菌という感染症も今年かなり流行し、現在も流行している。発熱、のどの痛みが主な症状で、発疹、腹痛、吐き気、頭痛を伴うこともある。3歳~9歳が多いが、0歳児や大人でも罹ることがあり、頻度は少ないが、治った後に急性腎炎やリウマチ熱を合併することがある。適切な抗菌薬を飲んで24時間たって、全身状態が良好であれば登園、登校してもよい。

Take Home Message
・新型コロナウイルスの流行でしばらく抑えられていたいろいろな感染症が昨年ぐらいから再び流行している。
・新しい話題として、インフルエンザワクチンで、2024年から新たに経鼻の弱毒化生ワクチンが接種できるようになった。
・新生児、乳児のRSウイルス感染症は重症化しやすく、妊婦へのワクチン、ハイリスクの新生児への抗体の注射が推奨されている。
・ワクチンを受けていない乳児が百日咳にかかると重症化することが多く、生後2か月になったらすぐに5種混合ワクチンを接種することが大切である。
・ワクチン接種は子どもたちの命を守るために重要である。

質疑応答

質問 例年と比べて今年の流行が多かった病気としてはインフルエンザ、リンゴ病、溶連菌感染症が多かったという理解でよろしいか。
河村常任理事 今年は百日咳の流行が目立ったという印象がある。百日咳がこれほど流行した年は初めて経験した。インフルエンザは毎年流行しており、新型コロナウイルスも半年に1回は流行している。また、りんご病もしばらく出ていなかったと思うが、今年はかなり出たことも目立った。

質問 冒頭の会長挨拶にあったが、インフルエンザの流行が例年より早かった理由はなにか。
河村常任理事 理由はなぜかよく分かっていない。ただA香港型が昨年はあまり流行していない。概ね2年に1度流行する。日本が夏の時にオーストラリアは冬で、そのオーストラリアで7、8月に流行した型である。これが早めに入ってきて、免疫を持たない方が多かったためではないかと思っている。

質問 会長にお伺いしたいが、政府が昨日、来年の診療報酬改定率を2.22%、12年ぶりのプラス改定を決めた。これまで医療機関の経営のひっ迫と診療報酬の大幅な改定を医師会として求められてきた中で、まずこの改定率の受け止めを伺いたい。
加藤会長 従来と比べて高い改定率にしていただいたと思っている。病院団体が求めたのは10%以上の改定だったが、そうなると恐らく、保険料などが上がってしまうので、そこまでは上げられなかったのだろうと思っている。物価高騰と賃金上昇を今回の改定率で賄えるかどうかは分からない。状況によっては2027年にもう少し上げなければならなくなるのではないか、という印象である。

質問 医師会のアンケートでも県内の医療機関の厳しい状況が浮き彫りになっていると思うが、県内の医療機関が厳しい経営状況を脱却するためには10%程度の診療報酬の改定が必要だとお考えか。
加藤会長 多くの医療機関が黒字化するには、そのぐらい必要だと思う。今の2.22%でどのくらいの医療機関が救われるかは実際に統計を見てみないとわからない。今、赤字になっているところも0.88%から比べるとはるかに高い改定率なので、多くの医療機関にとっては朗報だと思っている。今まで医療機器等の購入や設備の修復にお金がかけられなかったが、今回の改定率であれば少しそういったこともできるのではないかと思っている。今回上げていただいていることに関しては非常に良かったと思っている。

質問 昨日、松本日医会長が記者会見で感謝を述べられていた。他方で医療保険制度の持続性という点で、医療の非効率や無駄、例えば検査の重複や頻回受診などの見直しは十分なのかという指摘もある。その点はどのようにお考えか。
加藤会長 非効率な面については、電子カルテが全国共通になればもっと効率よくなると思う。今はバラバラであり、大きな病院では電子カルテを6年ごとに更新しなければならないが、数十億という単位のお金が必要になる。効率化をしたいのであれば、これは国が全部やっていただきたいと思っている。マイナンバーカードを保険証とリンクさせているのは8割ぐらいだが、実際に使っている人は37%程度である。それが電子処方箋になるともっと少ない。台湾や韓国では電子化が進んでおり、エストニアは全国共通の電子カルテで動いている。そうなればもっと効率化される。重複する薬が投与されるとか、同じ病気で複数の医療機関を受診されるという非効率的なこともなくなるだろうと思っている。

質問 百日咳菌感染症の年齢分布を見ると小中学生が多いが、今の小中学生はワクチンを受けてないのか。
河村常任理事 0歳と1歳の時に四種混合を接種しているが、大きくなって抗体が落ちている。小中学生で免疫を持ってない子が多いので、就学前の三種混合ワクチンの接種や小学校6年生で二種混合の代わりに三種混合を接種するという話もある。

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