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記者会見を行いました

テーマ「新型コロナウイルスに伴う医療緊急事態宣言について」

日 時:令和3年5月21日(木) 15時~16時

場 所:山口県医師会 会議室


《 河村県医師会長 》 
 特にこの1週間、変異株の影響で、感染患者は急速な増加を示しています。われわれがこの状況の中でどのような行動をとればよいかを考え、一昨日、会員に対して「医療緊急事態宣言」を発出しました。これからは、県民と県行政と医療関係が三位一体となってコロナに対応することになると思います。
 本日は、県病院協会の三浦会長、感染症の基幹病院である山口大学医学部附属病院から鶴田教授にお越しいただいた。重症の治療は基幹病院、中等症は病院協会の病院、一般のクリニックは、早期発見とワクチン接種、これを一気に進めていかなければならない。

《 三浦県病院協会長 》 
 山口県は、今までは比較的、新型コロナウイルス感染の患者も落ち着いていた状況であったが、5月の連休以降、非常に急速に増えている。県内は142の病院があるが、このうち新型コロナウイルス感染症の重点医療機関が6、入院協力医療機関が22。それぞれの立場において、重症者や中等症者以下など、入院患者を診させていただいているが、重症者が非常に増えていることで、なかなか軽症や中等症患者が重症化したときに、重点医療機関への搬送が厳しい状況になっている。比較的軽症の患者を扱っていた入院協力医療機関で、今まで上位の病院がしていた治療をせざるを得ない状況になってきている。一番怖いのは、急速に状態が悪化し、重症化するケースが多いので、それを県民の皆様にご理解いただきながら、要は感染しないことが一番であるが、早期に発見し、それ相応の対応をしていくことが必要ある。
 今できることをやりながらやっていくが、現場においては医師、看護師等のスタッフ含め、精神的にも肉体的にも、特に重症患者を抱えている重点医療機関においては疲弊している。いつまで今の状況が続くのかが問題となってくる。全体の数としては大都市に比べれば少ないかもしれないが、山口県の規模においてはコロナに特化した病床稼働率も7割を超えている状況であるので、今後、これ以上増えると余裕がなくなってしまう。それに伴い、がん、脳卒中あるいは心筋梗塞などの一般的な救急患者に対する影響も出てこざるを得ない。山口県の今後の医療体制を維持するためにも、県民の皆様あるいは他の医療機関の皆様にご協力をお願いしたい。

《 鶴田山口大学附属病院副病院長 》
 今回の第4波は大阪もそうであるが、立ち上がりが急である。急激に感染者数が増えたのが1点。2点目は、その中での中等症や重症、特に中等症が多くその比率が高い。この2点で受け入れる医療機関が大変になっている現状を知っていただきたい。
 中等症は肺炎が起こった患者、これは中等症1という。中等症2は酸素が必要な患者で、呼吸不全が起こり始めている患者である。更に進むと人工呼吸が必要な重症患者という分類になる。中等症と重症者の割合が多い理由の1つは、山口県は高齢化率が高いというところ。もう1つは、高血圧や糖尿病などの基礎疾患を持っている人が、この1年間、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、かかりつけ医に行かず治療があまりされてこなかった。そういったくすぶったところで、今回、第4波という急速な増加が起こったといえる。
 医療機関としては最大限努力している。県内は、医療圏に限らず広域に患者を受け入れ、対応しているが、一昨日、山口大学の重症の病床がすべて埋まるということがあった。現時点ではその中でも快方に向かい、人工呼吸器が必要なくなった患者もいる。ただこれは予断を許さない。まだ人工呼吸器が必要になるかどうかは慎重にみており、軽々にベッドが空いたと言う状況ではないが、満床とはいいながらベッドの空きをつくってやっている。これは大学だけでなく、そのほかの医療機関もそうしていると思われる。そういった現状があることを報告したい。

《 加藤県医師会副会長 》 
 感染モニタリング指標は5つある。「確保病床使用率」は医療のひっ迫状況を反映する。現状は73.1%、これは520床の内の7割が使用されているということである。50%以上でもステージ4であるが、ステージ4をはるかに超えている状況である。
 「入院率」は、今のところステージ3になっていないが、先ほど三浦会長からお話があったように、県内の28医療機関でなるべく患者を受け入れ、感染が外に行かないように受け入れている結果が反映している。
 「重症病床使用率」は、県内に47床あり、21.3%。ただ、重症者を診るためには医療スタッフが多く必要で、私の病院だと59床の病床をすべてコロナ病床に変えて、16床やっと確保できる状況である。それがさらに重症者がでると手がかかるということで、非常に医療負荷が大きい指標である。これは今、ステージ3である。
 「療養者数」は553人。ステージ4は10万人あたり30人以上という指標だが、これが40.7でステージ4の状況にある。
 「直近1週間でのPCR検査陽性率」は保健所が一生懸命、検査している結果、ステージ3の状態である。「直近一週間の新規感染者数」は308人、22.7でステージ3の状態だがステージ4に近い状態である。「感染経路不明な者の割合」は14.6%、これは保健所等が感染を広げないために努力している結果、ステージ3までいっていない。これが50%を超えると手に負えなくなる指標と思っている。

 

 

 

 

[主な質疑]
〇確保病床数について

《鶴田副病院長》
 確保病床数は、昨年末に県内病院に県が調査を行い、人工呼吸患者の最大受け入れ数として出てきた総和である。病床は術後や救命に使用するICUが利用されるが、受入が増えれば、大きな手術を止めるような事態も想定された数値である。

 

〇今後の病床確保について

《 三浦会長 》
 入院調整やホテル療養待機者が100人程度おり、その中で基礎疾患を持っている方や高齢の方は、急に状態が悪くなるなどの可能性が高い。そういった方のモニタリングが必要。
 これ以上患者が増えてくると、軽症や無症状、中等症でも酸素投与が必要な程度の軽度の患者を受け入れてくれる医療機関に手上げをしてもらうことも必要になってくる可能性がある。今後の状況によっては、思い切った対策を打たないといけない。

〇県の集中対策期間の取り組みの評価について

《 河村会長 》
 県の集中対策期間は間違いではなく、実行していけばいいと思うが、医療的にはステージ4相当で、それを蔓延防止や緊急事態宣言にするかということは、経済を止めることになるが、これは政治の問題で、県庁で最終的に判断することだと思う。

 

〇県・国による緊急事態宣言などの発出について

《 河村会長 》
 県と危機感に関して感覚を共有し、情報の交換もしている。県も対策を出して2,3日しか経っていないので、すぐに変更は難しいかもしれないが、全体のバランスを見ながら、宣言を出すことも必要ではないかと思っている。

 

〇高齢者のワクチン接種率の進捗状況に対する評価と分析について

《 河村会長 》
 高齢者の接種率は山口県が全国3位と聞いている。山口県は、立ち上がりが早く、地域の行政、県行政と医療機関で話し合いがうまく進んだのではないかと考えている。

 

〇医療の具体的な逼迫状況について

《 加藤副会長 》
 山口県はほぼ変異株である。軽症と思っていてもすぐに中等症になる。また、中等症から2日ぐらいで重症化し、重点医療機関に患者を搬送した事例もあった。感染者の2/3程度が中等症である。早めにかかりつけ医や医療機関を受診していただき、早い段階でウイルスの増殖を抑える薬を開始していただくことも蔓延防止のためにはいいと思っている。従来のものと比べて感染力も強く、重症化しやすい。そこがひっ迫する要因の1番大きなところだと思っている。一般病院でICUの施設がないところで人工呼吸器をするのはかなりのマンパワーの消耗になり、ほかの医療ができなくなるという可能性が高いと考えている。
《 三浦会長 》
 中等症や軽症の患者を治療しているが、半日や1日で急激に症状が悪化し、重点医療機関に搬送した患者がいる。入院患者や酸素投与を必要とする患者はCT画像で客観的に肺の状況を把握したいが、コロナ患者に特化してCTの機器を使うわけにはいかないので、一般診療が終わったあとでしか画像検査はできない状況である。
 コロナ患者の隔離病床を確保し、出入のその都度、防護服を着て、消毒をしているが、今後、暑くなると肉体的にも精神的にもストレスになる。できれば、交代要員も含めてスタッフの人数を増やしていきたいと思うが、それはどこの病院も同じで、限られた医療資源の中でやりくりしている状況である。
《 鶴田副病院長 》 
 ここ1週間、重症化への期間が短くなっている患者を複数経験している。私どもが危機感を強くしているのは、最近、救急車で搬送中に急に重症化し、飛び込みで大学病院に搬送される方がいること。20代、30代の方の発症がないが、増えていけばそういったことも起こるのかと思う。予断を許さない感じでいる。

 

〇入院調整について

《 三浦会長 》 
 入院調整は県コロナ対策室のスタッフが頑張って調整しているが、調整に半日以上かかることが多い。その流れをスムーズにしていくために、医療機関がバックアップする体制をつくっていかなければならない。症状が軽くなった重症患者が入院協力医療機関や一般病院に移るという流れをもう少しパイプを太くしていかなければ、調整が難しくなってくると思われる。

 

〇医療緊急事態宣言について

《 今村副会長 》
 「医療緊急事態宣言」は、医療がどのように大変であるか今の状況をお伝えするのが目的であるとともに、県民の皆様が、是非これを知って、自らの行動に関して切迫感をもってほしいということが、もう1つの目的である。基本的には、医療と県民の行動は車の両輪であり、この2つなくして、片方だけが頑張ってもうまくいかない。
 外出自粛はウイルスを動かさないということで、一番大事だと思う。感染予防対策の徹底は、3密だけでなく、バーベキューなど1密でも危険であるという認識を持つこと。マスクはできるだけ不織布にしてほしい。
 明日は我が身という気持ちで対応してほしいと心から思う。それが医療を守る、医療が適切に行われるために、とても必要なことと感じている。

 

〇自宅療養について

《 鶴田副病院長 》
 山口県は、基本的にはなるべく自宅療養は避ける方針で来ているが、なかなか宿泊療養施設に入れずに、自宅の時間が増えているのも事実である。ただし、自宅療養しなければいけない方は条件を付けている。宿泊療養施設では看護師がおり、看護師から担当している医師に情報を伝えることができるが、自宅療養ではその点が宿泊療養施設より甘くなるため、避けている。
大阪や東京のように新規の感染者が増えれば、自宅療養の期間は延びるし、自宅療養の方が増えていくのは仕方ない。そうならないように県庁が頑張っているのが実態である。

 

〇症状の急変に対する対応の現状について

《 鶴田副病院長 》 
 これまで、対応しきれなかったことはないが、肺炎があるかないかをチェックして入院ができれば一番いい。入院協力医療機関で、軽症であろうとレントゲンやCTで肺炎を確認することが理想である。宿泊療養施設だとそれができず、呼吸困難を訴えていないが様子がおかしいなど、パルスオキシメーターで酸素が下がっているとして、宿泊療養施設から医療機関に移るなどが起こっている。医療機関に入るときに軽症といわれていたが、酸素が必要になって中等症になり、中等症を受ける準備をしていない医療機関から中等症を受ける医療機関に移動するケースもある。また、中等症と思って受け入れていたら、重症ですぐに人工呼吸器が必要になるなど、第3波の時は病院間、病院と宿泊療養施設間の移動がめまぐるしく起こる状況ではなかったが、第4波では同日に入院・移動ということが起こっている。変化の激しさを物語っている。

 

〇今後の医療提供体制について

《 鶴田副病院長 》 
 感染患者を受け入れている入院協力医療機関や重点医療機関以外に、ある程度落ち着いた患者、コロナ感染症に関する治療が不要になった患者に対し、後方支援医療機関をなんとかしようとしている。
 重症患者は、短い方は7日、長い方は53日間、人工呼吸器管理が必要となる。その間、毎日毎日、1時間1時間、患者の様子を観察しながら、人工呼吸や、筋弛緩薬、鎮静薬、鎮痛剤を常に調整しながら、患者の呼吸状態を見ながら治療をしている。
 長期間の人工呼吸を終えると患者は動けなくなる。そのあとのリハビリテーションにとても時間がかかる。そういったことを支援していただける病院を県庁で早急に準備を進めているところである。リハビリや、もともと持っている基礎疾患の治療ができる施設をつくっていくと、ベッドが空いていく。もともとの新型コロナウイルス患者を受け入れる施設も増やしながら、後ろも増やしていって、少しでもスペースを広げていくという対策を今やっているところである。

 

〇高校生のPCR検査について

《 河村会長 》 
 PCR検査は、その時点のことしかわからない。イベントがあるのであれば、その前にやることは有意義であると思う。
《 鶴田副病院長 》 
 広島県が公共施設などで唾液PCR検査をし、7%~10%程度の陽性の方がだるさを訴えたというデータが出た。症状がありながら職場や学校に行っているということがわかり、尾身会長も発表された。今回の高校生の検査の結果で日本全国に発信できるデータが出れば、1つ有意義な結果になると思われる。

 

医療緊急事態宣言

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